チェルノブイリの経験を生かして悲劇を回避せよ--松本市長/医師・菅谷昭《上》

外部被曝量の基準値で人体への安全性語るな

──3月下旬に開かれた内閣府の食品安全委員会に、参考人として出席されました。

びっくりしたのは、これまで核災害時の食品汚染をどうするかという基準値がなかったこと。原発保有では世界第3位の国が、なぜ基準値を設けていなかったのか、非常に意外だった。それがホウレンソウから放射能が検出されて急きょ、国際放射線防護委員会(ICRP)や世界保健機関(WHO)、国際原子力機関(IAEA)などの基準値を参考にして暫定基準値を設けた。

私は放射線の専門家ではないが、ベラルーシでの経験から今回の暫定基準値をどう思うか聞きたいと言われ、出席した。机の上で考える研究者というのは、どうしても現実味がないから甘い。農業生産者の立場を考えて、基準を「緩やかに」という人も委員にいて、彼らの考えもわかる。だが、私は「子どもや妊産婦の命を守るためにも、基準は厳しいほうに置いたほうがいい」と言った。チェルノブイリでは、小児の甲状腺がん患者が急増したのは事故から5年後だ(下グラフ)。

委員の中には「甲状腺がんはたちがいいがんだから、大したことはない」と言う人もいたので、思わず「ちょっと待ってください」と。5歳、10歳で手術を受けた子どもたちを考えてみてほしい。家族も「なぜ汚染された野菜を食べさせてしまったのか」と後悔が付きまとう。そんな現実を委員たちは知らない。

私がいなかったら、「甲状腺がんは大したことはない」で通ってしまったのではないか。放射線の専門家は個々の被害者のケースを考えない。みんな統計で集団として扱ってしまう。国民一人ひとりのレベルで考えてもらわないと困る。

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