今は「2013年のアベノミクス相場」と似ている? 今後も「ツーリスト投資家」に振り回されるのか
今回はツーリスト投資家をめぐる需給要因について分析する形となったが、最後に最近の経済状況にも簡単に触れておこう。
世界経済は悪化、一方で米国株下落は想定より後ずれも
ひとことで言えば、世界経済の悪化は着実に日本経済の重しとなってきている。6月15日に発表された日本の5月の貿易統計では、輸出数量は前年同月比6.4%減と8カ月連続の減少だ。輸出金額は前年比で増加しているものの、増加率は0.6%にすぎなかった。そのうち、中国向けの輸出金額は前年同月比で6カ月連続のマイナスと、中国経済の悪化が日本経済に影を色濃く落としている。
このため、6月30日発表の5月の鉱工業生産は前月比1.6%減と4カ月ぶりのマイナスで、昨年夏場以降で見ても生産の頭が抑えられており、製造業収益への圧迫が懸念される。
一方のアメリカでは、5月の住宅着工件数(6月20日発表、前月比21.7%もの急増)など、足元では堅調な経済指標が多い。こうした指標などによって、同国の株式市場は「どうせ連銀はこれ以上はあまり金利を上げないし、景気は好調だ」との、いいところ取りの楽観が広がっている。
それに対し、連銀はインフレ抑制のため、景気を犠牲にしても利上げを行う構えを崩しておらず、今後の同国経済はやはり悪化の度合いを強めると覚悟すべきだろう。
ただ、筆者の当初予想に比べ、同国の景気が粘り腰にあるのは事実だ。もっと早く米国株やドル円相場がすっきりと下落し、その分アク抜けが早いと見込んでいたが、この分だと景気の悪化が遅れて長引き、今後の米国株やドル円相場の底値のタイミングが後ずれする可能性がある(その場合は、日本株の底値時期も後ずれすることになる)。
ごく目先では、日本政府の為替介入が行われるかどうかも注目だ。すでに日本政府は5月30日に三者会合(財務省、日本銀行、金融庁)を開いており、鈴木俊一財務相や神田真人財務官からは円安牽制を狙った発言が繰り返されている。
筆者は、現状のドル円相場が政府が懸念しなければならないほどの動きだとは判断していない。だが、7月27~28日の日銀金融政策決定会合における、YCC(イールドカーブコントロール)修正や撤廃の可能性をめぐる思惑も含め、ドル円相場の不安定化は気にかかるところだ。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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