今は「2013年のアベノミクス相場」と似ている? 今後も「ツーリスト投資家」に振り回されるのか

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ところが、そこから株式市況は取り立てての悪材料がなかったにもかかわらず暗転し、同年6月13日のザラ場安値1万2415円85銭まで、約22%もの急落に陥った。この株価下落も、ツーリスト投資家がもう十分と判断し、利食い売りに回ったためだとの話だった。

前掲の2014年時のコラムでは、当時を語る短期筋の話も載せている。「別にアベノミクスで日本経済がどうなろうと、われわれは日本に住んでいるわけでもないから、関係ない。ただ、アベノミクスで投資家が騒ぎ、株価が上がりそうであれば買うし、株価の動きが止まれば売る、それだけのことだ」。

今回の局面でも、「われわれは日本のことなどよく知らないし、日本経済や企業がどうなろうと関心はないが、株価が上がると思えば買うし、下がると思えば売る、それだけだ」と買い上げてきたツーリスト投資家が、これからいったん日経平均を叩き落すのではないだろうか。

なお、当時起きた日経平均の下落率22%を、今回の6月19日のザラ場最高値に当てはめると、約2万6343円になる。

もっと大事なのは「長期展望」

ただ、2013年と今回との類似点を、当時の5~6月の株価急落だけに求めるのは適切ではないだろう。ツーリスト投資家などが単なるブームと割り切って、飛び乗り飛び降りしたあと、「実は安倍政権が大いに構造改革を成し遂げるのではないか」といった明るい長期展望を描く投資家が増えたことは事実だ。結局、アベノミクス初期の相場は2015年の夏場まで続き、日経平均は2万1000円手前まで、息の長い上昇軌道が続いた。

筆者は今回の局面でも、初期のブームに乗じた投機的な先物買いやツーリスト投資家の現物買いが一巡し売りに回ることで、日経平均が2万7000円辺りに下押しすると懸念しているわけだが、もしそうなったとしても、それは単に「ブーム」が一巡し仕切り直しになるだけだ、ともとらえられる。

実際2013年と同様、「日本株が仕切り直し後に長期上昇相場入りする展開」は十分ありうると考えている。ただし、それは日本株が世界景気の悪化に連動して下落したあとの反発に加えて、日本経済、さらには日本企業の経営が、現在の高い期待に良い方向で応えられるかにかかっている。

今、世界の投資家の目が日本経済や日本株に集まっているという点は、日本企業が収益力を構造的に高め、それを見せつけるチャンスだ。もし、この絶好機を生かせないのなら、今後日本株は長期にわたって「海外株が上がればそれに準じる分だけ海外投資家に買い上げられて上がるが、逆に売られれば脆くも下がる」という体たらくを脱せないだろう。

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