原材料高と過当競争、道路復旧への険しい道のり
「三陸から浦安まで、被災地の生活道路復旧に支障を来すかもしれない」
道路業界で舗装用の原材料不足が懸念されている。震災前、ストレートアスファルト(ストアス)の供給元である石油元売り各社は出荷先の大手道路工事会社に対し、「年度末に集中する発注時期の平準化や取引価格の是正」(大手元売りの流通業者)を迫り、供給を絞り込んでいた。そこへ追い打ちをかけたのが、ストアスを生産する東日本の製油所への大震災直撃だ。年200万トン弱とされる需要の1割は今、韓国SKグループなどからの輸入で補っている。
石油元売りにとってストアスは、利益率の高い軽質油と違い、原料成分の精製がしにくく手間のかかる品目。各社は需要減に応じ大幅減産する一方、ここ数年は原油高で道路業界との価格転嫁をめぐる交渉が激化していた。従来1年ごとだった改定時期を3カ月ごとに大幅短縮し、元売り側が求める最低限のコスト転嫁も少しずつ実現していたという。
それでも「道路業界とは温度差がある」(元売り系流通業者)。現在は1トン当たり約8万円の価格を大幅値上げするため交渉中だ。さらに原油市況と為替動向がより敏感に反映できるよう、「1カ月ごとの価格見直しを求めている」(道路大手幹部)。生産・販売継続の条件として、元売り側は値上げを強く主張する。
そうした中で出光興産は3月末、ストアスの生産を打ち切った。「残る在庫も8月末まで」(同社)。昭和シェル石油も10月で生産をストップするとされる。被災を免れた東日本の拠点でストアスを生産するのは、JX日鉱日石エネルギーの根岸製油所(神奈川県横浜市)くらい。東日本を中心に今後、供給不安が現実味を帯びてくる。
原材料高に受注も減少 震災特需に期待するが
道路工事会社は通常、ストアスと骨材を製造プラントでアスファルト混合物にし、施工現場へ運ぶ。「関東以西からどれだけ原材料を持っていけるかだ。復旧が本格化する半年から1年後に向けて安定確保の方策を探りたい」(大成ロテック)、「全体の7割近くに増えた再生品の比率を高められるか」(三井住建道路)。今や業界では深刻な原材料調達難を打開する糸口を探っている。