テレビが「サービスエリア特集」を頻繁に行う訳 出演者の視点で見るSA/PAの「バラエティ性」

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それでも、放送局に残る映像資料から、日本で最初のSAである名神高速・大津SA(滋賀県)では、開業当初から斜めの駐車マスであったことがわかったし、それと反対に1969年に全通した東名高速道路の開通式が、最後の開通区間である大井松田IC~御殿場IC間にある足柄SAで挙行されたときの空撮映像から、足柄SAの駐車マスは斜めではなく、直角だったことが判明した。

どうやら、当初は地形やスペースの関係で必ずしも統一されていなかったようだ。

現在の足柄PAの駐車枠(写真:7maru / PIXTA)

しかし、斜めのほうが同じ面積でも駐車台数を増やせることや、斜めにすることで発進するときの方向を統一できることから逆走防止のメリットがあるため、現在では「SA/PAの駐車マスは斜め」が常識になっており、そのことを番組内で説明した。

SA/PAとテレビの相性は良好

鉄道や航空、あるいは自動車そのものは研究対象として専門家も多く、分野も細分化されているが、高速道路は構造や道路の敷設といった土木面、料金や渋滞といった運営面、そして『熱狂マニアさん』に代表される利用者サービスとしてのSA/PAなどの硬軟両面で多様な要素が絡むため、それを総合的に俯瞰する専門家があまりいないように感じる。「高速道路研究」は、まだまだニッチな分野なのかもしれない。 

ほかにも最近、筆者がかかわったNHKのSA/PA関係の番組では、2022年4月9日放送の『有吉のお金発見 突撃!カネオくん・劇的進化!“サービスエリア”の お金の秘密』、同年9月6日放送の『クローズアップ現代・密着!サービスエリア 巨大市場の舞台裏に迫る』などがあり、NHKだけでも定期的にSA/PAが取り上げられていることがわかる。

テレビ番組は、より多くの視聴者を獲得するため、どうしても大げさにあおったり、すでに手垢のついたところでも人気があるために何度も取り上げたりと、メディアとしてはインターネットの最新の情報には負けている面が多いが、影響力という点ではまだまだ一定の力がある。

放送直後には取り上げたグルメや土産品に客が殺到するという現象もいまだにあるようだし、まだ当面、高速道路がテレビ番組に登場する機会は多そうだ。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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