日経平均は年内に3万5000円達成の可能性がある 今後の相場で投資家が買うのはどんな銘柄か

拡大
縮小

では、今後物色されるのはどのような銘柄になるのか。年初から4月末までは、本来の企業価値に比べてかなり割安な「大型のディープバリュー株」に買いを入れる戦略が目立ったが、これはかなり浸透してきた。

むしろ今後は単にPBR1倍割れの企業を探すよりも、1倍超になっても、さらにPBRを引き上げていける会社に注目が集まるだろう。どの業種というよりも「改革を進める覚悟を持つ企業」、つまり自己資本利益率(ROE)をより高める姿勢を打ち出す銘柄が買われていくとみている。

そのためには、企業の改革が一段と進むことが必須になる。日本株が長く低迷したのは、日本企業が時代の変化にあわせ、ときには本業を転換したり、不採算事業を切り離したりできなかったからだ。今後、どう企業を改革し、利益を伸ばすのか。投資家が知りたいのはそこだろう。PBR1倍を超えるのは企業として当然であり、そこからさらに自らの業績を伸ばす企業が市場で評価されていくステージに入りそうだ。

その観点からは優れたブランド力、技術力、商品・サービス開発力、マーケティング力などを背景に、業界で高いシェアを有し、競争優位性を生かして持続的な成長が可能な企業に注目が集まるとみている。

日本の投資家も真価が問われる局面に

改革が必要なのは日本企業だけではなく、日本の投資家も同じだ。残念ながら、いま株主として企業にさまざまな提言をしているのは海外アクティビスト(物言う株主)ばかりだ。

日本国内には、企業に積極的な提言を行うのが前提とするファンドがまだまだ少ないいっぽう、提言しなくても伸びそうな成長株に投資するアクティブファンドが多い。

このようなファンドに改革を任せるのはそもそも無理がある。またコストの安いパッシブファンドも、東証が作るインデックスなどを買うだけで、企業を積極的に選択しない。日本の投資家も、もっと株主として企業とやり合う必要がある。なんといっても、企業の価値向上には、日本企業をもっとも理解しているはずの国内の投資家が、日本企業の底上げのために本気で提言していくことが必要だ。

(本記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経ニュースプラス9」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT