日経平均は年内に3万5000円達成の可能性がある 今後の相場で投資家が買うのはどんな銘柄か
一方、今後を考えるうえでは、日銀の金融政策にも引き続き注目したい。日銀は6月15~16日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の現状維持(現行のYCC=イールドカーブコントロール政策の継続)を全員一致で決定した。植田和男総裁は記者会見で、日銀が目指す物価上昇率2%の安定的な達成について「なお時間がかかる」と述べた。
すでに日銀は4月の金融政策決定会合において、「賃金の上昇を伴う形で、2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指していく」との文言を加えている。そのため有力エコノミストは「年率3%の賃金上昇が慣性的に発生する状況が実現されたと判断されれば日銀は金融引き締め(≒政策金利の引き上げ)を開始する」と見ている。そして、「利上げ」の可能性が取り沙汰されるタイミングになって初めて、YCC撤廃が行われると考えることが基本となる。
サプライズYCC修正で下落なら押し目買いチャンス
もっとも、植田総裁は足元の物価の動きについて「下がり方が(想定していたよりも)やや遅い」と述べ、物価シナリオが揺れ始めていることを認めた。
またYCC修正に関しては、経済やインフレ、市場機能に関する評価を通じてのみ、YCCの政策変更タイミングをシグナルできると明らかにした。そのうえで決定は「(市場との丁寧な対話を心がけるものの)ある程度のサプライズはやむを得ない」と認めた。
そのため、今後の政策会合も、修正の可否は賃金上昇率を巡るデータに依存する「ライブ」となり、日銀は7月以降、いくつかの会合のうちにYCCをサプライズで調整する可能性がある。 その際、日本株は日米金利差縮小の思惑から円高ドル安となり、一時的に株安も予想される。だが、そこは良い押し目買いのチャンスを与えてくれるとみている。
植田総裁はこれまで「待つことのリスクは大きくない」と繰り返してきた。今回の会見では、金融政策が後手に回ってインフレが行き過ぎてしまうリスクは「ゼロではない」と述べた。ただ、政策修正を急いで物価目標を達成できなくなった場合のほうが「(政策)対応が難しい」と述べ、慎重に判断する姿勢を強調した。植田総裁は当面緩和継続の意向で、金融政策の修正はなさそうだ。現在の金融政策が近い将来に修正される可能性は今のところ限定的である。
日銀は賃上げが24年の春闘でも続くかを慎重に見極めたいという立場だが、賃上げの基調の強さを確認できれば、政策修正に早いタイミングで踏み切る可能性がある。ブルームバーグ調査でエコノミスト(47人)の6割強(64%)が年内の金融引き締めを予想している。早期引き締め論の根拠は、金融仲介機能の低下やイールドカーブの歪みなど、低金利政策の副作用などだ。
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