順天堂医学部「医師国家試験合格率100%」の裏側 「医系私学の勝ち組」といわれる所以と寮生活

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尾崎氏は1977年卒。寮は習志野にあった。8人部屋で医学部生は尾崎氏を含め2人。年上のリーダー格の部屋長も同室だった。寮生活について尾崎氏は、「医学部生にとって貴重な体験になっている」と指摘する。

寮での昔話に花を咲かせる尾崎会長(写真:筆者撮影)

寮生活で連帯感が生まれた

「寮生活を通じて、“国試を皆で一緒に乗り越えよう”という連帯感が生まれているのではないか。寮では人数の多い体育学部生が主導して、やたらと規律が厳しいので僕なんかは反発していたが(笑)。若者だけで生活できる空間は貴重で、なかなか体験できないなので、寮生活が嫌だと言う声はほとんど聞かなかった」

東京で生まれ育った尾崎氏にとって寮生活は少し窮屈だったようだが、地方から東京に出てきた、いろいろな仲間と出会えたことは貴重な体験だったと当時を懐かしむ。

順天堂大医学部には“名医たらずとも良医(りょうい)たれ”という格言が語り継がれている。患者の気持ちになって病気を治すことができる臨床医を育てようという考えが底流にある。

医学部附属病院をあえて“順天堂医院”としているのも、大きな規模の病院になっても病人を治すという基本を忘れないため。“病院”という言葉には病人を収容するところという意味があり、“医院”には治療するところという意味がある。

尾崎氏はこの格言を引き合いに出しながら、「良医」とは患者の尊厳を大事にしながら診療することだと強調する。例えば、実業界の第一線で活躍し、過去に名声を馳せた人が高齢となり、病気で診察を受けることになった際、「おじいちゃん。お元気ですか」などと話し掛かけると、相手はバカにされたと感じるだろうというのだ。

そうならないよう、尾崎氏は可能な限り患者の仕事や生活などのバックグラウンドを理解したうえで、診察室で患者に相対するようにしている。改めて同大医学部を見て、寮生活を経験することの大切さを感じているという。

「最近は受験の偏差値も上がって、優秀な学生がどんどん増えているが、患者さんをしっかり診られるいい医師をつくろうという意識が、私たちから見ると薄れている。高校から成績が良くて勝ち上がってきた学生のままだと、人のことを思う気持ちもあまり持たず、連帯感もなくばらばらのままだと思う。そういう意味では、寮の存在はとても評価できる」

さらに、こう話す。「寮で他学部生と共同生活することによって、今まで頭が良いというだけで生きてきた人間が、そんなことは関係なく、いろいろな喜びを経験できる。それが順天堂大医学部のいいところなのかもしれない」

君塚 靖 えむでぶ倶楽部ニュース編集部 記者

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きみづか やすし / Yasushi Kimiduka

証券・金融畑の記者を経験した後、医療系記者に転身。2018年1月にメディカル・データ・ビジョンに入社。同社情報誌「えむでぶ倶楽部ニュース」編集部で医療・健康情報のデジタル化と位置付けられる、人が一生涯の健康・医療情報を自ら管理できるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)についてや、コロナ禍で非接触型医療の新たな形として注目されるオンライン診療などについて執筆している。同社の医療情報サイト「めでぃログ」ポータル(https://portal.medilog.jp/)向けにも記事を執筆している。

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