順天堂医学部「医師国家試験合格率100%」の裏側 「医系私学の勝ち組」といわれる所以と寮生活
さくらキャンパスは京成電鉄の京成酒々井駅から20分ほど歩いた先の、丘の上にある。筆者が訪れた6月、キャンパスに続く道路沿いには、田植えを終えた田園が広がっていた。
出迎えてくれたのは、同大で物理を教える田中和廣教授と、数学の川村浩之准教授だ。田中教授は2010年から2年間、啓心寮の寮生を監督する寮監を務めた。川村准教授は現在の寮監だ。
啓心寮は男女で建物が分かれているが、朝昼晩の食事は一緒。ほぼ一斉に食べるまさに、“同じ釜の飯を食う”仲間だ。
キャンパスの朝は早い。
寮の開錠は午前6時だが、スポーツ健康科学部の一部学生はそれより早く寮を出て、トレーニングを始める。田中教授は「箱根駅伝などで活躍する陸上競技部の学生などは、結果を出すことを求められている。タイムがすべてだったりする。その現実の厳しさを間近に見て、医学部生が刺激を受けている」と話す。
啓心寮では学生が自治をしていて、基本的に学生の寮長をトップとした寮生たちが方針を決める。寮生だけで決められない場合に寮監の出番となる。血気盛んな若者が集まる場だけに、ケンカや冷蔵庫にあった他人の飲み物を飲んだといったトラブルもあるが、学生が仲裁に入るなどして解決している。
自分を厳しく律する仲間たち
田中教授は「入寮当時はあどけなさの残る若者だったのに、退寮する頃には、きりっと引き締まった顔つきに変わっている」と話す。川村准教授は、入寮当初、尊大な態度を見せていた1人の医学部生が、退寮するときに漏らした言葉が印象に残っているという。
「川村先生。僕はこの1年間、自分を厳しく律してトレーニングしている同年代の人たちと身近に接することができたのが本当によかったです」
寮生活で日々、真剣勝負をしている他学部生から刺激を受けた医学部生が、その後の医師に向けた勉強や臨床実習、国試に臨む気持ちに少なからず影響を与えているかもしれない。
啓心寮では、コロナ禍で中止していた医学部生の入寮を来年から再開する予定だ。
そんな体育学部生と寮での共同生活を経験した1人が、東京都医師会の尾崎治夫会長だ。
平日午前の東久留米市内のクリニックでの診察を終えると、午後にはJR御茶ノ水駅近くにある東京都医師会に向かい、会長業務に就く。東京都医師会の建物と順天堂大医学部キャンパスは、目と鼻の先にある。
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