米国でも実は「株主第一主義の修正」進む納得事情 新たな企業組織形態を導入する動きも広がる
ESGやSDGsへの取組みが株主総会における大きな争点として浮上してきたことに伴って、従来型のアクティビスト・ファンドが、これらへの取組みをめぐる議案を株主提案として株主総会に提出し、対象会社の経営を揺さぶる動きも生じている。
例えば、従来型アクティビスト・ファンドであるサード・ポイントは2021年、英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル(現・シェル)に対し、同社を伝統的な化石燃料事業を営む会社とLNGや再生可能エネルギー、マーケティングを含む低炭素事業を営む会社とに分割するよう求めた。
ESGやSDGsへの取組みをめぐる株主提案をする背景
同じく従来型のアクティビスト・ファンドであるTCIは、2020年、企業がその年次株主総会において定期的に脱炭素戦略への賛同を勧告的議案の形式で付議すべきとする「Say on Climate」キャンペーンを開始した。
スペインの空港運営大手アエナ、カナダ鉄道大手カナディアン・パシフィック、米格付け大手ムーディーズ、スイス食品ネスレ、英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル、米格付け大手S&Pグローバル、仏エネルギー大手トタルエナジーズ、イギリス家庭用品大手ユニリーバ、豪英資源大手BHPグループ、英豪資源大手リオ・ティントなどが、この考え方に従って、年次株主総会において脱炭素戦略への賛同を問う勧告的議案をすでに付議している(または今後付議することをコミットしている)。
日本でも、2021年にオアシスが、東洋製罐グループホールディングスの定時株主総会において、自社株買いなどと共に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を踏まえた経営戦略の開示を義務づける定款変更を求める株主提案を提出するなど、欧米と同様に、従来型のアクティビスト・ファンドが、ESGやSDGsへの取組みをめぐる議案を株主提案として株主総会に提出して、対象会社の経営を揺さぶる動きが現われている。
このような動きが生まれているのは、ESGやSDGsへの取組みをめぐる議案は機関投資家株主の支持を集めやすいためだ。
従来型のアクティビストとしては、そのような議案を株主提案によって提出して対象会社の経営を揺さぶることにより、結果的に、自らが本来目的としている事項(大規模な株主還元など)につなげることができると読んでいるからではないかとも考えられる。
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