特定原付「7月解禁」で電動キックボードどうなる よくある2つの疑問と解決すべき3つの課題

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次は、法改正が「時期尚早ではないか」という指摘だ。「なぜ、いきなり法律が決まったように感じるのか」というのが、2つ目の疑問である。

電動キックボードの新しいルールについての報道が増えたのは、2021年後半から2022年前半にかけて。2022年4月19日には、衆議院本会議で今回の改正道路交通法が可決・成立し、それから1年と少しで同法が施行されることに「特定原付ありきで、どんどん話が進んでしまった」ような印象を持つ人が少なくないだろう。

もとをただせば、電動キックボードが世界的に注目されるようなったのは、2017~2018年に欧米でシェアリングエコノミーの観点から、電動キックボードシェアリングの事業化が一気に進んだことにある。

電動キックボードのシェアリング事業は欧米が筆頭となった(写真:forden / PIXTA)

これに対して、日本もシェアリングエコノミーなど新しい事業領域での経済発展を念頭に、2019年には生産性向上特別措置法(いわゆる規制のサンドボックス制度)による私有地内での電動キックボードシェアリング実証実験を始めた。それが、2020年の産業競争力強化法の改正によって、公道での実証実験に発展する。

これと並行して2021~2022年には、警察庁では「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」や「パーソナルモビリティ安全利用官民協議会」により、電動キックボード等に対する道路交通法のあり方を話し合った。それに関連して、国土交通省が道路運送車両の保安基準に関する検討会を開くという経緯だ。

つまり、国は最終的に特定原付となる電動キックボード等の新しい乗り物の社会導入に対して、2019年の初期構想から4年ほどで社会実装したことになる。これまでの交通関連の過去事例の中では、かなり早いスピード感での法的対応をしたといえるだろう。

背景には、ベンチャー企業支援などの日本の産業競争力強化と、インバウンドへの対応などを見据えた、事実上の道路交通法の国際協調という側面があると思う。

特定原付にまつわる3つの課題

次に、課題について考えておこう。ここには、大きく3つ要素があると考えている。「モラル」「これまでにない法整備」、そして「本気の地域づくり」だ。

まず、モラルについて。これは、性善説に頼るのでは不十分であろう。すでにシェアリング実証実験や「公道で使用できない」電動キックボードでの、違法な利用や事故も報告されているからだ。

そのため、警察庁は特定原付の安全な利用を促進するための関係事業者ガイドラインを作成し、交通安全対策の強化を進めていく方針である。

同ガイドラインは、販売事業者、シェアリングサービス事業者、そしてデータ関連を含めたプラットフォーム提供事業者それぞれに対して、自主的かつ継続的にユーザーへの交通安全への対応の徹底と啓蒙活動を求めている。

また、特定原付では、道路運送車両として規定の装備を持つ場合、時速6kmの最高速度で一部の歩道を走行することが可能だ。これを、「特例特定原付」と呼ぶ。

この時速6kmとは、歩道走行を容認されている、いわゆる「歩行領域の乗り物」という解釈によるものだ。「歩行領域の乗り物」には、電動車いすや立ち乗り式ロボットなども含まれ、道路運送車両以外での「歩行者と同等の扱い」となる。

また、令和4年改正道路交通法(2023年4月1日施行)では、これらを「移動用小型車」と規定したほか、自動配送サービス用の遠隔操作型小型車を含めて、歩行者と同等に扱うとした。

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