中国経済の回復ペースが鈍り、4月以前までのエコノミストの予想を裏切る状況になっている。そんななか、一部の金融機関は中国のGDP(国内総生産)成長率の予想値について下方修正を始めた。
日本の金融大手の野村グループは6月16日、中国のGDP成長率の予想値を2023年については5.5%から5.1%に、2024年は4.2%から3.9%にそれぞれ引き下げた。
「ゼロコロナ政策の緩和により対面式のサービスの需要が急回復したことや、不動産市況の好転への期待感などから、市場には一時的に楽観的見方が広まった。しかし4月以降は景気回復の勢いが鈍化した一方、(中国政府の)政策的なテコ入れの動きは目立たなかった。そのため市場の見方は弱気に転じ、人民元の(対ドルレートの)下落、金利の低下、株価の下落、物価の下落など(の連鎖)を招いている」
野村グループの中国担当チーフエコノミストを務める陸挺氏は、現状をそう分析し、次のように付け加えた。
「景気回復の前途は厳しさを増している。不動産市場の混迷の度合いや(ロシアのウクライナ侵攻や米中対立のエスカレートなどの)地政学的緊張による負の影響について、市場は過小評価していた可能性がある」
「特効薬はない」との見方も
スイス金融大手のUBSも同じく6月16日、2023年のGDP成長率の予想値を5.7%から5.2%に下方修正した。
「4〜6月期以降の不動産市況の失速、個人消費回復の勢い低下、輸出の落ち込み、工業生産額の伸び悩みなどを考慮すると、中国の経済成長は4〜6月期は大幅に減速しそうだ」。UBSの中国担当チーフエコノミストを務める王涛氏は、そう予想する。
中国政府は5月の主要経済指標を(6月中旬に)発表した前後から、景気回復を持続させるための対策を次々に打ち始めた。例えば6月16日に開催された国務院常務会議では、マクロ経済政策のコントロール強化、有効需要拡大の後押し、実体経済の強化と質の向上、重点領域におけるリスクの予防と低減という4項目について、一連の政策措置が提起された。
だが前出の陸氏は、これらの対策の効果について慎重な見方をとっており、次のように警鐘を鳴らした。
「政府の対策が万能の特効薬であるかのような、過剰な期待を持つべきではない。市場参加者は、中国のGDP成長率がこれから数四半期にわたって4.0%、あるいはそれ以下に減速することを覚悟すべきだ」
(財新記者:范浅蝉)
※原文の配信は6月19日
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