中国の新興EV(電気自動車)メーカー、蔚来汽車(NIO)の業績が失速している。同社が6月9日に発表した2023年1〜3月期の決算報告によれば、同四半期の売上高は106億8000万元(約2088億円)と、前年同期比7.7%の増加にとどまった。純損益は47億4000万元(約927億円)の赤字を計上し、損失額が前年同期の約2.7倍に拡大した。
NIOの1〜3月期の納車台数は3万1041台と、前年同期比では20.5%増加したものの、直前の2022年10〜12月期より22.5%減少した。さらに気がかりなのが、1〜3月期の自動車事業の粗利益率がわずか5.1%だったことだ。これは10〜12月期比で1.7ポイント、前年同期比では13ポイントも低い数字だ。
粗利率の低下を招いた主因は、車載電池の調達コストの上昇だ。NIOは決算報告書のなかで、「車載電池の原料である炭酸リチウムの市場価格は2023年に入って下落したが、(その恩恵が)電池の価格に反映されるには一定の時間がかかる」と釈明した。
それ以外にも(従来よりも低価格の車種を追加したことによる)プロダクト・ミックスの変化や、旧世代の車種を値引き販売したことなどが、粗利率の低下につながったという。
スポーツ寄りの乗り味が裏目に
4月以降の業績はさらに悪化している。NIOが公表した月次の販売実績によれば、4月の販売台数は6658台、5月は6155台にとどまり、2月の1万2157台、3月の1万378台より4〜5割も落ち込んだ。
同社は4〜6月期の納車台数について、2万3000台から2万5000台との予想を開示している。だが、CEO(最高経営責任者)の李斌氏は決算説明会で、「販売計画と実績に乖離が生じている」と認めた。
NIOは2022年、第2世代のプラットフォーム(車台)を採用した3つの新型車を立て続けに投入した。それらのうち、相対的に低価格の上級セダン「ET5」は販売拡大の切り札になるはずだったが、月販1万台の目標は一度も達成されていない。
「スポーツ走行寄りに振った乗り味が、多くの消費者に受け入れられなかった」。財新記者の取材に応じたNIOのあるエンジニアは、ET5の不発の背景をそう打ち明けた。
同社は2023年に5つの新型車を投入し、全車種のプラットフォームを第2世代に更新する計画だ。「販売台数は7〜9月期に回復に転じ、粗利率も2桁台に戻るだろう」。李CEOはそう期待をかける。
(財新記者:余聡)
※原文の配信は6月10日
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