■クロスマーチャンダイジングで棚をとる
今回の、コーヒーバッグ+水筒=持ち歩ける水出しコーヒーのような展開を「クロスマーチャンダイジング(Cross Merchandising)」という。商品カテゴリを超えて関連商品を1つの売り場・コーナーに展示することで販売相乗効果を上げる手法だ。苺とコンデンスミルク。ほうれんそうの横にごま和えのもと。買い手の立場に立てば、一度に商品揃って手間もかからず買い忘れも防げる。また、新たな使い方を知ることもできる。
両社はクロスマーチャンダイジングによって「流通業が(消費者からの)値下げ圧力に苦しむなか、コーヒーバックと水筒の組み合わせ販売により販売点数を増やせることや、商品の魅力向上で価格競争になりづらい売り場づくりができる」という提案をするという。
それには各社もウエルカムを示すだろう。売上=客数×客単価である。景気の回復がよちよち歩きのさなかに起きた震災で、消費は再び冷え込むことも予想される。客数を増やすことは容易ではない。しかし、「財布にやさしい」提案ができる組み合わせ商品で客単価を上げることができれば流通各社は乗ってくるに違いない。
提案が広がれば、両社にとって今までと異なる新たな販売ポイント、様々な企業がしのぎを削り喉から手が出るほど欲しがる「棚」が獲得できる。また、コンビニは水筒のサーモスにとっては従来全く接点のなかったチャネルだ。コーヒーバックはスターバックスがインスタントの棚を確保しているが、キーコーヒーも新たな棚を確保できる。
かつて、ハウス食品が「六甲のおいしい水」を発売した時のことだ。同社は飲料メーカーではなく食品メーカーだ。それ故、小売店の棚を確保することも困難なスタートを切った。そのため、主力商品のカレー売り場の横で「カレーと一緒に」とアピールしたり、ご飯を炊くための水として米売り場の横に置いたりと、徹底したクロスマーチャンダイジング策で普及を図って定番商品の座を獲得したのである。
勝ち残りたければ手を組んで1+1を2以上にする。そのために必要なのは、消費者にとってどのような価値を提供できるかと、流通チャネルがいかにいい商売をできるかという視点なのである。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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