社外取締役が自ら語る「報酬と実効性」のバランス モニタリング機能には限界、報酬はもらいすぎ

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佐々木氏が「もっと良いやり方がある」「改革していく必要がある」と述べた社外取締役などコーポレートガバナンスのあり方について、筆者の見解を述べます。

日本では1990年代前半まで、メインバンク・監督官庁・労働組合が経営者を監視する仕組みでした。しかし、この3つが力を失い、ガバナンス不在の状態になりました。この状況で2000年前後、総会屋事件や品質表示偽装問題など不祥事が多発し、ガバナンス改革が叫ばれるようになりました。

東証は、グローバル化や外国人の持ち株比率が上昇したことを受けて、アメリカ型のガバナンスを取り入れました。株主重視のアメリカ型ガバナンスの主役が、株主から送り込まれる社外取締役です。こうして日本では、ガバナンス強化=社外取締役の導入となっています。

社外取締役が主役のガバナンスで良いのか

しかし、インタビューで見たように、社外取締役の機能には限界があります。また、株主だけでなく、従業員・消費者・政府・地域住民などさまざまな関係者が企業に大きな利害・関心を持っています。

だとすれば、社外取締役だけでなく、いろいろな利害関係者が経営者を監視する多元的なガバナンスが必要ではないでしょうか。とくに、企業の内情を最もよく知る従業員がガバナンスに大きな役割を果たすことを期待したいものです(経営者は嫌がるでしょうが)。

佐々木氏が最後に述べたように、社外取締役を導入して終わりでなく、実効性がある形になるよう改革が進むことを期待しましょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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