社外取締役が自ら語る「報酬と実効性」のバランス モニタリング機能には限界、報酬はもらいすぎ
――佐々木さんともう1人の社外取締役は、X社でモニタリング機能とマネジメント機能を十分に発揮していますか。
佐々木:それは、X社の株主が評価することなので、回答を控えさせてください。
――では、佐々木さんがY社で社外取締役を起用した経験でも、一般論でも結構ですので、見解をお聞かせください。まず、社外取締役がモニタリング機能を発揮できるのかという疑念について。
佐々木:できないしょう。社外取締役は、会社側から提供された情報に基づいて経営者に裁量的行動があるかどうかを判断します。会社側、つまり経営者が自分に不都合な情報を隠そうと思えば、社外取締役の目を欺くのは実に簡単です。「社外取締役がいるから下手なことはできない」という緊張感があることはありますが、実効性はゼロです。
――なるほど。社外取締役のモニタリング機能には限界があると。
佐々木:もちろん、モニタリングは必要ですし、メインバンクや監督官庁が監視した昔のやり方よりはましかもしれませんが、社外取締役という形が本当に適切かどうか。もっと良いやり方があるような気もします。
やはり報酬は高すぎる
――マネジメント機能のほうはどうですか。
佐々木:こちらも、発揮できているとは思いません。というより、私を含めてほとんどの経営者は、社外取締役にマネジメント機能を期待していないはずですよ。
――そうですか。社外取締役が社内や業界の事情に詳しくないからですか。
佐々木:と言いますか、経営者は、意思決定に重要な生の情報や深い分析をタイムリーに知りたいわけです。そのために、日頃から消費者・ユーザーと対話したり、社員やコンサルタントに分析してもらっています。月1度の取締役会で社外取締役が発する一般論や思いつきの発言を本気でありがたがっている経営者がいるとしたら、経営者失格でしょう。
――社外取締役が十分に機能を発揮していないとなると、社外取締役の報酬は高すぎるという批判に繋がるわけですが……。
佐々木:高すぎます。バブルですね。Y社の場合、従業員は毎日働いて平均年収500万円台、一方、社外取締役は月2時間で約1000万円。労働組合から文句を言われないか、心配です。
――最後に、社外取締役という制度の今後について、見解をお聞かせください。
佐々木:社外取締役について批判的なことを述べましたが、今はまだ過渡期。社外取締役を導入して終わりでなく、実効性がある形に改革していく必要があると思います。
――ありがとうございました。
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