ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請
――国軍と民主派勢力の戦いが激しさを増す中、軍事政権は総選挙を実施すべく準備を進めているといいます。
有権者名簿の作成や投票所に配置される係員の訓練などの準備を進めている。ただ、ミャンマーの市民は選挙に強く反対しており、かなりの抵抗に遭っている。
軍事政権は政党登録に関する新しい法律を制定したが、クーデター前に政権を担っていたアウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟」(NLD)や「シャン民族民主連盟」(SNLD)は政党登録を抹消された。代わりに国軍がコントロールする政党がいくつも結成された。仏教徒の極右ナショナリストの政党や、麻薬王が作った政党、実態のない少数民族の政党などを国軍は自分たちのコントロール下に置いて総選挙を有利に進めようとしている。
バングラデシュの難民キャンプにいるロヒンギャの人たちについても、ミャンマーに帰還させるパイロットプロジェクトを軍事政権は開始している。そこに参加すれば市民権を与えるとか、法的地位を保証する身分証明用のカードを発給するとしているが、そのカードは投票で使えるだけで他にはほとんど意味がない。
笹川陽平氏の動きに疑念
――総選挙に正当性があるとは思えませんが。
文民統制下の2020年に実施された総選挙に関与した公務員やボランティアとも話をしたが、彼らの誰一人として、このたび軍事政権が行おうとしている総選挙を支持する者はいなかった。しかし、国軍の兵士が自宅に来て銃を突きつけ、投票を強制した場合、住民がそれに逆らうことは難しい。また、国軍は住民を困窮させたあげくに、コメなどの食料支援と引き替えに票を得ようとするかもしれない。
――「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書きを持つ日本財団会長の笹川陽平氏は今年2月にミャンマーを訪問した後、タイの首都バンコクで記者会見に臨み、「民主化の第一歩は選挙。何が何でもやらないといけない」と力説したと報じられています。
笹川氏に対しては4月にミャンマーの406の市民社会団体が書簡を送り、「『選挙』を支持する発言が日本政府の特使としてのものだったのか」について問い合わせた。特使の任務の詳細や、特使としての活動の予算や報酬、特使が日本政府のどの部署に対して報告義務を負うのかについても明らかにするように求めた。しかし笹川氏から回答は得られなかった。日本政府も笹川氏の活動との関係について明言を避けている。
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