ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請
――ミャンマーでは2021年に軍事クーデターを起こした国軍による市民に対する弾圧が激しさを増す一方、5月の大型サイクロン・モカの襲来で深刻な被害が出ているといいます。現地の状況はどうでしょうか。
サイクロン・モカは少数民族が多く住むミャンマー西部を直撃した。国連や国際NGO(非政府組織)が被災地に援助物資を届けようとしたが、ミャンマー国軍がそれを阻み、援助を必要とする人に行き渡らない状況が続いている。
とりわけ厳しい状況にあるのがイスラム教徒のロヒンギャの人々だ。彼らは国軍によって国内避難民用のキャンプに収容され、自由に外に出ることもできない。サイクロン襲来の警報も伝えられず、逃げ場を失い、多数の死傷者が出ている。
――どうすれば援助を必要とする人たちに届けることができるのでしょうか。
国連や東南アジア諸国連合(ASEAN)、日本を含めた国際社会に対しては、ミャンマーの軍事政権や国軍には絶対に援助物資を送らないでほしいと訴えたい。2020年11月の総選挙で当選した議員らが結成した民主派勢力の「国民統一政府」(NUG)に相談すれば、被災者への届け方を教えてもらうことができる。ミャンマー国民の多くが支持するNUGと連携して被災者支援に取り組んでほしい。
タイに逃れた避難民の過酷な状況
――国軍による空爆や村の焼き討ちにより、多くの人々がタイなどの隣国に逃れています。そうした人々の現状は。
国境地帯の状況は過酷だ。たくさんの人たちが国境を越えてタイに逃れている。タイ北部の町メーソットでは、もともとミャンマーからの避難民が多くいたところに、新たに5万人が流入した。それとは別に、タイ側にある9つの難民キャンプでは現在、約10万人が生活している。キャンプにいる人たちはミャンマーに帰ることも、他国に行くこともできず困窮している。キャンプ内にあった学校や診療所は現在、運営されておらず、食料の配付も1カ月に10ドル未満に減少している。
タイ国軍はミャンマー国軍と親密な関係にあるため、新たに入ってきた民主化活動家にとってタイも非常に危険な場所だ。身分証明書を持っていなければいつでも逮捕されてしまう。国連難民高等弁務官事務所も手出しできない状態だ。
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