岸田首相が解散めぐり「思わせぶり発言」した裏側 「任期完投」を優先なら総裁選前の"勝負"見送りも
最後まで解散風が吹き荒れ、与野党が神経戦を展開した通常国会が、6月21日、何事もなかったように、当初会期どおり閉幕した。与野党が対立した防衛財源法を始め、重要法はほぼすべて成立、政府与党幹部は「終わりよければすべてよし」と口を揃えた。
国会閉幕を受けて21日夕記者会見した、岸田文雄首相も「経済対策も含めて過去10年にない成果を出せた」と鼻高々だった。ただ、最終局面での「伝家の宝刀を抜くとみせて敵も味方も欺いたうえでの肩透かし」(自民長老)に、与野党双方から「やりすぎ」との批判、反発が噴出し、内閣支持率の再下落も重なって、「いい人の仮面がはがれ、解散カードも失った」(同)との厳しい見方も広がる。
岸田首相は「解散権の次は人事権」とばかりに、秋口までの党・内閣人事で岸田1強による政局運営の主導権を確立する構えで、すでに与党内では「さまざまな人事構想」が飛び交っている。しかし、こうした岸田流手法が、自民党内の反岸田勢力の台頭を後押ししかねず、次の節目となる政局秋の陣は、岸田首相の思惑どおりの展開とはなりそうもない。
与野党双方が岸田首相の顔色をうかがう状況
そうした状況下、官邸や岸田派の側近からは「党・内閣人事の後、首相は当分、内政・外交の重要課題への対応に専念し、状況次第では党総裁選前の解散も見送る考え」(岸田派幹部)との声も漏れてくる。さらには「首相の本音は任期3年の完投で、その時点での勇退も心に秘めている」(最側近)との見方すら出始めている。
その一方で、岸田首相は秋以降の政権浮揚の材料として、国民的批判が拡大する一方のマイナンバーカードと健康保険証一体化について、「全国での集中調査の結果が出る9月下旬に『先送り』を決断する」(同)との声も出る。
いずれにしても、来秋の自民総裁選までの政局運営については「すべては岸田首相の腹一つ」(同)で、与野党双方の実力者・幹部たちが岸田首相の顔色をうかがう状況が続くことは間違いない。
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