自民・公明の激突「出来レース」説も囁かれる事情 早期解散絡む両党協議の裏に自民権力闘争の影
「風雪に耐え」て20年以上政権与党として手を組んできた自民、公明両党が、連立解消含みの危機に瀕している。衆院選挙区「10増10減」に伴う新設区を巡る両党の候補者調整での対立が、公明が東京の選挙区での協力拒否という“激突”に発展したからだ。
衆院解散戦略にも影響しかねない事態を踏まえ、自民党総裁の岸田文雄首相と公明党代表の山口那津男氏は、5月30日の党首会談などで「連立政権の堅持」と「東京以外の選挙区での全面協力」を確認した。しかし、双方の当該地方組織での相互不信は根強く、早期の円満決着は困難視されている。
その一方で、両党関係者の間では「党首同士の、『早期解散は、しないしさせない』との暗黙の了解」(自民選対幹部)による「次期衆院選までの妥協を前提とした“出来レース”」(同)との見方もささやかれる。
さらには、“公明外し”を目論む麻生太郎副総裁・茂木敏充幹事長の自民中枢と、公明との太いパイプを持つ自民反主流グループの旗頭となる菅義偉前首相・二階俊博元幹事長との、“党内権力闘争”も絡んでいるとの臆測もあり、与党内に「舞台裏で権謀術数が渦巻き、今後もどう転ぶかわからない」(同)との不安を広げている。
「信頼は地に落ちた」と東京での“絶縁宣言”
「自公激突」を表舞台で露呈したのが、5月25日の自公幹事長会談。東京の選挙区調整で公明の提案を拒否する茂木幹事長に対し、石井啓一・公明幹事長は「東京での信頼関係は地に落ちた」と怒り心頭で、衆院選をはじめ、都内の国政・地方選挙での協力を解消すると“絶縁宣言”。協議継続を求める茂木氏に「これは最終的な方針だ」とダメ押しした。
石井氏をここまで怒らせたのは、かねて公明が候補擁立を準備し、「自民も了解していた」とされる東京28、29両区について、茂木氏が「自民が了解した事実はなく、勝手に選挙区を譲れというのでは断るしかない」と拒否したためだ。「そもそも事前合意の有無は、まさに藪の中」(関係者)で、双方の言い分は完全にすれ違ったままだ。
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