岸田首相が解散めぐり「思わせぶり発言」した裏側 「任期完投」を優先なら総裁選前の"勝負"見送りも

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それも踏まえて最側近は、「首相が表舞台で早期解散を否定すれば、その時点で求心力を失うので、解散への意欲をにじませ続けるしかなかった」(最側近)と説明。岸田首相自身も事態が決着した16日夜、「事前の戦略どおりに進んだ」と笑みを浮かべたとされる。

岸田政権は現時点で、発足からまだ1年8カ月余。岸田首相は主要閣僚の相次ぐ辞任などで政権危機に陥った昨年末でも、「やるべき課題に挑み、きちんと成果を出すことが最優先」と繰り返してきた。最側近は「そのために、解散はできるだけ遅らせたいとの考えも揺るがず、初心を貫いただけで、いたずらに解散権をもてあそんだわけではない」と強調した。

今回の解散先送りを受け、当面の政局運営は党・内閣人事断行の時期と内容が焦点となる。与党内ではすでに「政局秋の陣をにらんで、首相は自前の布陣をつくるため、大幅人事を目論んでいる」との憶測が広がる。「首相の大権である解散権と人事権を操って岸田1強を強める狙い」とみる向きが多いが、「やりすぎは禁物」(自民幹部)との声も出る。

今回の岸田首相のやり口について自民党内では「周りをもてあそびすぎた。次も同じことをやれば、自民内の反岸田の動きを加速させるだけ」との声が多い。野党幹部も「また首相が解散権を振り回せば、国民の信頼を失うだけ」と指摘する。

「マイナカード」「公邸忘年会」などで支持率再下落

そうした中、解散先送りに合わせて主要メディアなどが順次実施した世論調査で、内閣支持率はそろって下落。支持と不支持が再逆転する結果も相次いだ。なかでも、毎日新聞が17、18の両日実施した全国世論調査では、内閣支持率は33%と5月20、21日実施の前回調査(45%)から12ポイント下落、不支持率は前回調査(46%)から12ポイント増の58%となった。

同社の担当者は「首相の長男で首相秘書官だった翔太郎氏が首相公邸で忘年会を開いていた問題や、マイナンバーカードをめぐるトラブルが多発したことなどが影響したとみられる」と分析した。その一方で、今国会での解散見送りについては、「評価する」が40%で、「評価しない」36%を上回り、「自己都合解散への国民の嫌悪感」(関係者)が浮き彫りになった。

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