六角さん、借金苦でどん底に成功あきらめた過去 60歳過ぎたら「仕事は好きなようにやったほうがいい」

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――山賊みたいな人とは……?

「自分にとっていい影響を与えない人」とか、「自分のためになってくれない人」のことです。自分のためになってくれるというのは、いろんな意味がありますけどね。

――「自分を引き上げてくれる」ということでしょうか。

そうです。でも、経済面での引き上げではないんですよ。例えば、大金をくれて、一瞬引き上げてくれても、自分自身が変わらなかったら、あっという間にお金を使ってしまって、また同じところに舞い戻ってしまいます。

だから、精神的に、あるいは現実的に、自分の生き方が変わるような人と出会えるかどうかが大事なんだと思います。

それに、僕の場合は、お金を誰からも借りられなくなる状態に陥るとか、嫁さんとのことをちゃんと振り返らないまま何回も離婚を繰り返すとか。人としてダメだった経験が何度かあって、自分の愚かさや不甲斐なさをこれでもかと思い知りました。

その時にしっかり堕ち切ったからこそ、浮かび上がれたんだと思うし、人の気持ちを少しは理解できるようになったのかなと今は思います。

「どん底を経験して良かった」

――六角さんのそうした人生経験がお芝居に生きているのかもしれませんね。

『六角精児の無理しない生き方』(主婦の友社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

俳優という職業の中では、どん底を経験して良かったと思います。

芝居においては、ある程度技術も必要だけど、人間として、良い経験も良くない経験も、より深く刻まれている人のほうが引き込まれるっていうのはあるんじゃないかな。

――芝居に生きざまが出ると。

「俺の生きざまが出てるなぁ」と思いながら演じている人はいないと思うけどね。あ、でも若い時に一人いたか。「俺の生きざま、ここで見せてやるぜ」って意気込んでいた役者。

その人、じーっと客席を見つめながら芝居をしているから、「何やってるんだ?」と聞いたら、「客席に念を送ってる」って言うんですよ。

――お客さんに「俺を見ろ!」という念を送っているんでしょうか。その人、売れましたか。

あまり売れてないです(笑)。ともあれ、役者をやるような人間は、僕も含めて「自分を見てほしい」という自意識が多かれ少なかれあるとは思うけどね。

人間、誰だって承認欲求があるじゃないですか。やっぱり「いいね」と言われたいから、SNSで自分のことを発信する。僕も「いいね」って思われたい気持ちありますけど、「もうどう思われてもいいや」と肩の力が抜け始めたのが50代ぐらいからです。

伯耆原 良子 ライター、コラムニスト

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ほうきばら りょうこ / Ryoko Hokibara

早稲田大学第一文学部卒業。人材ビジネス業界で企画営業を経験した後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に。就職・キャリア系情報誌の編集記者として雑誌作りに携わり、2001年に独立。企業のトップやビジネスパーソン、芸能人、アスリートなど2000人以上の「仕事観・人生哲学」をインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。両親の介護を終えた2019年より、東京・熱海で二拠点生活を開始。Twitterアカウントは@ryoko_monokaki

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