精子提供で子どもを作った「女性カップル」の現在 カップル歴25年の2人が経験してきた葛藤

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2人が息子くんにプレゼントした「好きなところ100」ノート。「息子くんの好きなところはどんどん出てくるから、2人で相談して100に絞って書き込んだ」というエピソードから、彼女たちの愛の深さが伝わります(写真提供:びんさん)

ここまで読んで、「母親が2人なんて子どもが困るんじゃ? 子どもは、父親と母親がそろった家庭で育つべきじゃない?」と感じた人もいるのではないでしょうか。確かに、育児において、両方の性の親がいることでフォローしやすい場面はあると思います。

なので、パパとの交流が復活したというエピソードを聞いた私は「お子さんは男の子だし、今後の性教育とか、男性が対応したほうがいい問題も出てくるでしょうから、よかったですね」とコメントしました。

すると、びんさんは「性教育の基礎知識については、息子が小さいころから少しずつ教えてきました。思春期に入ってからの実践編は、仲のいい友人(異性カップル)の男性に相談相手になってほしいとお願いしているんです。彼らは息子が小さいころから親しくしている親戚のような存在。人格的にも的確な知識を与えてくれそうな人なので」との答え。そんな教育計画まであるのか!と驚きました。

それを聞いて思ったのは、「そもそも、片方の親だけの家庭もたくさんある。異性と結婚していても、実質はワンオペ育児という家庭もよくある。両親が育児に関わっていても、フォローしきれないことも山ほどある。大事なのは、1つの家庭内だけで補えない部分を、周りが助けられる社会であることなんだ」でした。

びんさんが理解者を増やす努力を続けるワケ

マンガの中では、「同性カップル家庭で育った子どもの『育ち方(身体の健康や教育の成果など)』は異性カップルに劣らない。むしろ親子関係などでは異性カップルよりも良好なこともある」という調査結果を紹介しました。これは、中国とアメリカの研究チームが、約30年間の34の研究を分析してまとめた結果を、2023年に英医学誌『BMJグローバル・ヘルス』に発表したものです。

ただ、同調査では「周りからの差別を受けたり、社会的支援を受けられなかったりという大きなリスクもある」と指摘しています。とくに、子どもがLGBTへの差別や偏見が激しい環境で暮らしているとしたら、それは十分にありえますし、それが子どもの精神不安につながることもあるでしょう。

だからこそ、びんさんは、子どもを産み育てる地域の教育環境について調べたり、学校や地域コミュニティーに積極的に交わったり、アライ(理解者)を増やしていく努力を出産前から続けてきたと言います。「同性カップルが親であるためにわが子が受ける不利益を最小にしたい」とつねに考えて動いてきたそうです。その活動の一環として、びんさんはLGBT団体「にじいろかぞく」の活動を通して、自分たちの経験をシェアし、「子どもがほしいLGBT」「子どもを育てているLGBT」のコミュニティーを続けているのでしょう。

じゃあ実際の彼女たちの子育てって?と気になる人も多いと思います。次回は、彼女たちの育児生活を紹介します。

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。
ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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