東京にNATO連絡事務所の開設「仏が反対」の裏側 NATOと日本政府が協議中、マクロン大統領の思惑

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しかし、マクロン氏はこれまでのところ、挫折を繰り返している。

今年4月初旬、EU欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長を伴って中国を訪問したマクロン氏は、中国をロシア・ウクライナ紛争の和平調停者にしようと試みたが、フランスメディアは「手ぶらで中国から帰国した」、つまり失敗したと報じた。

マクロン氏は昨年プーチン氏と会談したが、戦争終結の役に立てなかった。ロシア制裁に西側同盟国として加わりながら、習近平氏を和平実現の立役者に仕立てる試みも失敗し、外交で得点は稼げていない。

フランス国内で低迷するマクロン氏の支持率

前出の『マリアンヌ』誌は、マクロン氏がプーチン氏との会見で成果を上げられなかったことに「フランスの国際的信頼はさらに損なわれた」と評した。中国訪問はリベンジになるはずだったが、フォンデアライエン委員長は中国訪問時に宥和的な姿勢で中国外交に臨むマクロン氏とは逆に、バイデン氏に近い対中強硬姿勢を見せた。

フランス国際関係研究所(IFRI)のティエリー・ド・モンブリアル所長は「EUは連邦国家でないために本当の意味でのEU外交政策は存在しない。マクロン氏はEUを代表している印象を与えているが、何の権限もない」とし、マクロン氏の言動がEUでは複雑に受け止められていると指摘する。

マクロン氏の姿勢は、国内の支持率低迷とも関係している。フランスでは大統領は国家の威信を示し、首相は内政を司るという暗黙の慣例があるが、今年、強引に成立させた年金改革法案の批判の矛先は、ボルヌ首相よりマクロン氏に向けられている。成立した年金改正法の廃止のためにいまだに大規模な抗議デモが続いている。

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