東京にNATO連絡事務所の開設「仏が反対」の裏側 NATOと日本政府が協議中、マクロン大統領の思惑

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フランスでは、ストルテンベルグ事務総長が同盟国と協議する前にメディアに明らかにしたことについて、フランス側が遺憾に思っていると伝えられている。フランスはこの件を日本政府の独自判断とは思っておらず、アメリカからの要請か、日本がアメリカに忖度した可能性を感じている。

トランカン氏は「バイデン大統領率いるアメリカは、長い間、NATOをアジアに誘致しようとしてきた。バイデン氏にとって、日本人のとくに価値観、正確に言えば民主主義の観点から見て、NATO連絡事務所の開設は安全保障にかなった選択肢だ」と分析。

そのうえで、トランカン氏は「中国との競争や対立に関する立場で、ヨーロッパとアメリカが同じではないことを思い出してもらいたい。ヨーロッパ人は、中国は制限を設けてでも協力しなければならないパートナーだと考えている。現時点では敵ではないが、西側同盟が舞台を北大西洋からアジアに移すことで、中国にわれわれを潜在的な敵と思わせる可能性がある」と説明する。

世界を分断する対立に組み込まれる懸念

ヨーロッパはロシアと長年、緊張関係を続けてきた。NATOがロシアと国境を接するポーランドやバルト三国にミサイル防衛システムを設置する計画を進めていることで、西側同盟から敵視されているとロシアが受け止めたことがウクライナ侵攻の大義名分にある。同じことがロシアの東側の極東で起きれば、ロシアだけでなく中国も敵に回しかねない。

マクロン氏の懸念は、NATOが連絡事務所を東京へ設置する段階に入れば、次の段階として、NATOの中心が徐々にアジア太平洋にシフトし、世界を分断する大きな対立に組み込まれていくと考えていることだ。

そもそもフランスは、異なる考え、異なる統治システムを持つ国同士が互いに尊重して共存する多国間主義を外交政策として掲げている。さらに大国間協調主義により、中国、ロシアとも協調する考えを持つ。

ブレグジットでアメリカに寄り添うイギリスが離脱し、ウクライナ紛争でドイツの東方政策が挫折する中、マクロン氏はフランスがEU外交でも、NATOの政策でも影響力を高めたいと考えている。

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