成田第3ターミナル、華々しい離陸に残る課題 LCC利用客にとって、本当に便利なのか

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都心から直接、第3ターミナルへ乗り入れられるのが高速バス。ただし、早朝など一部を除いては、第2ターミナルと第1ターミナルを回ってからとなるので、これも意外と時間を要する。東京空港交通(エアポートリムジン)や京浜急行バスなどFSC利用者が中心のバスならともかく、東京駅と成田空港を結ぶ、京成バス「東京シャトル」(事前予約で片道900円)、平和交通・JRバス関東「THEアクセス成田」(片道1000円)といった、ジェットスター・ジャパンや現バニラエアの要請で運行が実現した格安バスも、同様なのが悩ましい。

実は、東京シャトルとTHEアクセス成田については、第3ターミナルの開設に併せてLCC各社がまずは第3ターミナルへ乗り入れるルートに変更するべく申し入れた。だが、高速バスは高速道路から第2ゲートを使って成田空港へ入ってきており、その際は最初に第3ターミナルに停車させることが道路の構造上難しいという理由から、今回は見送られた。

とはいうものの、高速道路から第1ゲートを使えば、第3ターミナルへ直行させることは物理的には不可能ではない。バニラエアの石井知祥社長は「すべてのバスでなくてもいいので、1時間に1本程度だけでも東京駅から第3ターミナルへの直行バスを運行して欲しい」と話している。

自家用車は第3Tで降車もできない

さらに、アクセスの問題がある。自家用車は原則として第3ターミナルへ乗り入れられない。自家用車でアクセスした場合、乗降も駐車場も第2ターミナルを使うことになる。「LCCの利用客は鉄道やバスで来るケースが多い」(成田国際空港広報部)とはいうものの、一定の利用客にとっては不便な面が残る。

羽田の国際化が進む中で、都心から遠い成田は不利な状況に立たされている。空港として利用客を拡大させていくには、LCCの活用がキモになりそうだ。しかしながら、第3ターミナルが結局はLCC利用客にとって不便な要素を残したままだと、それもおぼつかなるおそれはある。

(撮影:尾形 文繁)

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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