証拠物のフロッピー改ざんした大阪地検特捜部・前田恒彦元主任検事に実刑判決

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証拠物のフロッピー改ざんした大阪地検特捜部・前田恒彦元主任検事に実刑判決

村木厚子・元厚労省局長のえん罪事件で、証拠物のフロッピーディスク(FD)を改ざんした罪に問われていた大阪地検特捜部・前田恒彦元主任検事に、4月12日、大阪地裁で判決が言い渡された。判決は1年6カ月の実刑判決だった。以下、カッコ内は判決要旨からの抜粋。

大阪地裁の中川博之裁判長は、「主任検事の肩にかかる重圧などがあったにせよ、極めて短絡的な判断。検察官の行為として常軌を逸し、本件の経緯に酌むべき余地はない」と断言。高機能のファイル管理ソフトウェアによる情報の改変は、「特別の解析プログラムを用いることなしには改変の有無を判別することができないほど巧妙なものであり、非常に悪質」としたうえで、「本件犯行は刑事司法の根幹をも破壊しかねない所業として極めて強い非難に値する。検察庁のみならず、刑事司法全体の公正さに対する国民の不信を招いた」と強い口調で非難した。

求刑2年に対し1年半の投獄としたのは、「妻や姉らが社会復帰を待ち望むとの陳述書を提出し、大学時代の恩師らが寛大な処分を求める嘆願書を出していること。前科前歴はなく、本件で懲戒免職処分を受け、さらに社会的制裁を受けることが予想されること。扶養を必要とする2人の子供がいること」などが考慮された。一方で、執行猶予がつかなかった理由は、「わが国の刑事裁判史上類を見ない犯罪で、刑事司法の公正さを揺るがした犯行の悪質性はもちろん、社会に与えた衝撃の大きさも重く考慮せざるを得ず、刑事責任は誠に重大」だから。

前田元主任検事が「FD改ざんの事実を上司に隠すように言われた」と認めているにもかかわらず、本判決が証拠改変のみに触れて隠避に言及していないのは、犯人隠避で起訴されて、ともに容疑を全面否認している大阪地検特捜部の大坪弘道元部長や佐賀元明元副部長の公判を意識してのことと見られる。罪を全面的に認めた前田事件の公判での証拠調べはわずか2回。本事件の全容解明は、大坪元部長や佐賀元副部長の公判に持ち越された格好となっている。
(山田 雄一郎=東洋経済オンライン)

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