サウンド・コントロール 伊東乾著

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サウンド・コントロール 伊東乾著

音や声を用いて人の心を動かし、左右するサウンド・コントロールは、マインドコントロールでもある。その現場を現在と歴史をたどって思考を重ねた一種のフィールドノート。内容は、ルワンダ内戦でのラジオによる情宣と戦後の人民法廷から始まり、古代ローマからルネサンス期に及ぶ西欧社会の司法と宗教の角逐、能舞台から銀閣寺の二つのサイレンサー(吸音体)まで、テーマも現場も一見、書名からはるか遠いところで展開する趣があるが、最終的には音に収斂した問題提起がなされる。

友人である地下鉄サリン事件の死刑被告との交流を媒介に、裁きの白洲(しらす)の音の構造が明かされる箇所も興味深い。著者は作曲、演奏、音響を専門とする学究だが、古今東西の歴史に深くかかわることでここまで専門の本質に迫るのかと、感銘を受けた。主観や価値観は、思考以前に「声のメディア被爆装置」によって刷り込まれるという指摘は重い。異色の書だ。(純)

角川学芸出版 2100円

  

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