今回の簡易インタビューで、「これは良くないことだな」と感じたのが、感染者に対する周囲の対応。下記のように感染者たちを嘆かせるような声が少なくなかったのです。
「38度台の高熱が出たとき、直感的に『もしコロナとかだったら夫と2人の子どもにうつしたくない』と思いました。上の子は学校の試験前だし、下の子はサッカーの試合があるし、夫は仕事が忙しそうなときなので。だから、すぐにネットでいろいろ調べましたが、『熱くらいで病院に行くな』とか、『ただの風邪なのに検査するやつは頭がおかしい』とか酷い言葉が書かれていて、嫌な世の中だなと思いました」(40代女性)
「5月以降も気をつけていたけど、かかってしまっておそらく両親と祖母にうつしてしまいました。私は39度近い熱が3日間出て治まりましたが、父と祖母は基礎疾患があるので心配な日々が続いています。上司や同僚には『今のコロナはただの風邪だから大丈夫』と言われましたが、とてもそうとは思えなくて……」(20代女性)
「熱は3日で下がりましたが、その後もマスクをしていたら『今でもしてるの?』と半笑いされました。こっちは他の人にうつさないよう気をつけているのに、相手の気持ちを汲み取れない人がたくさんいて残念です」(20代女性)
年齢も立場もメンタルも病歴も、みんなそれぞれ違う
たとえば、「3日間、38~39度の熱が出た」「2~3週間、のどの痛みがあり、せきが止まらなかった」という今回のインタビューで多かった症状を「どう思うか」の個人差は決して小さくないでしょう。「普通の風邪と大差ない」「だから大したことない」と感じる人と、「普通の風邪と同じとは思えない」「だから辛いし不安」と感じる人の両方がいて、感情の差は大きなものがあります。
また、「家庭や仕事の環境によって不安が募りやすいかどうか、実際に支障が出やすいかどうか」の個人差もあるでしょう。それぞれ、年齢も立場もメンタルも病歴なども違うのですから、「自分のように思わない人がいるかもしれない」という気持ちは心の中に持っていてほしいところです。
実際、ネット上にコロナ感染の症状や辛さなどを書き込むと、「それは風邪の症状そのもの」「風邪だからほっとけば治る」「大げさにさわぎたいだけの人」「またコロナ禍の社会に戻りたいのか」などと冷たく言い放つようなコメントが多発しています。
感染者が症状や辛さを吐露することすら許さないようなコメントは、やはり寂しさを感じざるを得ません。「風邪と同じ」という主張の是非はさておき、目の前に感染者がいたとき、「風邪は万病の元」という言葉を思い出して優しい言葉をかけてみてはいかがでしょうか。
木村 隆志
コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
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きむら たかし / Takashi Kimura
テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。
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