大混雑なのに運行本数減らした「江ノ電」戦略の妙 観光客増えすぎて住民が乗車できない例も
神奈川県の藤沢と鎌倉を結ぶ、江ノ島電鉄。通称「江ノ電」は1902年の開業以来、120年以上にもわたって、地元住民や鉄道ファンに愛されている鉄道路線である。
江ノ電の車両は小型の車両を2両1組に連接した形状で運転されており、沿線では湘南海岸を走る区間もある。映画やテレビドラマで使用されることが多い鎌倉高校前駅は国内外から多くの観光客が訪れる有名観光スポットとなっている。
江ノ電は全線単線だが列車の本数も多く、列車同士のすれ違いが可能な交換設備も途中5カ所(うち1カ所は峰ヶ原信号場)ある。車両は小ぶりだが、住宅密集地を走る区間もあることから住民の利用も多く、輸送機関として欠かせない存在になっている。
12分間隔が14分間隔に
そんな江ノ電にこの春、衝撃が走った。実に71年ぶりの大規模な「ダイヤ改正」を行ったのだ。1952年に改正して以降、早朝深夜時間帯の見直し、コロナ禍における深夜時間帯の繰り上げなど、日中時間帯以外のダイヤ改正は実施していたが、日中時間帯の12分間隔運行のダイヤ改正は、一度も行っていなかった。
具体的には、12分間隔で運行していたダイヤが、14分間隔に変更された。これまで1時間に5本、たとえば毎時00分、12分、24分、36分、48分というパターンが決まっており、時刻表を確認せずとも乗れていたのが、14分間隔となり、1時間当たりの運行本数がまちまちになってしまったのだ。
沿線住民にとっては、「生活リズムが変わってしまう事態」である。なぜダイヤ改正に踏み切ったのか。その事情を、江ノ電の担当者に聞いてみたら、以下のような説明があった。
「今回のダイヤ改正は、コロナ禍に伴う需要減少のためというよりは、コロナ禍収束に見込まれる多客による遅延対策です。当社では以前より、混雑による遅延のほか、腰越駅付近での併用軌道区間で道路混雑により遅延が発生し、ご利用のお客様には迷惑をかけてしまっている状況でした。今回のダイヤ改正によって列車同士のすれ違いを行う駅や両終端駅において停車時間を確保することで回復力を持たせ、安定した定時運行を可能にします」
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