大混雑なのに運行本数減らした「江ノ電」戦略の妙 観光客増えすぎて住民が乗車できない例も

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また、今後のダイヤ改正についても「お客様のご利用動向や社会情勢を考慮し、検討する場合がある」とのことだ。

今回のダイヤ改正について江ノ電の運転士にも話を聞いたところ、「運転時間に余裕が持てるようになったため、多少遅延が発生していたとしても気が焦らないので、安全運行につながっていると思う」と話していた。なお、利用者の1人にも直接話を聞いてみたところ、「各地で鉄道の減便が行われている中なので、2分の我慢ですむならば、まあ仕方がないと思う」ということであった。

ゴールデンウィーク(GW)中には多くの観光客が江ノ島や鎌倉に訪れた。その際も筆者は沿線に足を運び、ダイヤ改正の影響に関して利用者に話を聞いた。すると、「GW中は絶対混んでいるし、運休や大幅な遅れがあるかと思ったが、運休していなくてよかった」とのことであった。

実はコロナ禍前には、江ノ電は混雑による運休が年間最大で400本近くあったという。過去のGWでも頻繁に運休が行われていた。今年のGWは最大で10数分の遅れが出たらしいが、最終的には運休がゼロであった。

14分間隔になって混雑はどうなった?

一方で、ダイヤ改正によって12分間隔から14分間隔に変わったことで、輸送能力自体は低下していると思われる。では、GW時にそのことが、混雑に拍車をかけたということはなかったのか。この疑問を江ノ島電鉄・鉄道部にぶつけてみたが、きっぱりと否定された。

「12分間隔のダイヤでは混雑により遅延が発生すると、列車遅延が全線へと波及し、その結果、一部列車に対し運転休止を行っており、1日あたりの運転本数が減少し、輸送力はかえって低下していました。今回のダイヤ改正により運転間隔が拡大したものの、GWの混雑時においても運転休止を行うことなく、ほぼダイヤ通りの輸送力が確保でき、一時お並びいただくことはございましたが、混雑に拍車をかけるような事態には至りませんでした」

もう1つ、GW時の混雑で疑問に感じたことがある。観光客が増えすぎて沿線住民が乗れなくなってしまったのではないかということだ。江ノ電は沿線住民への施策として、2017年からコロナ禍前の2019年まで沿線住民むけ優先入場の社会実験を鎌倉市と行っていた。これは、改札規制時における鎌倉駅西口改札・構内への入場を、優先的に行うものだ。

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