バンコクの鉄道「日本式システム輸出」苦闘の歴史 「上から目線」の技術押し売りはもう通用しない

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バンコク イエローラインモノレール
タイ政府予算にて建設され、一部区間がソフト開業したイエローライン。開業後の運営はBTS系列のEBM(Eastern Bangkok Monorail)で、GOA4の完全無人運転を行う(写真:@kata26rakuda)
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急速な拡大を続けるタイの首都バンコクの都市鉄道。その新たな路線として6月3日、モノレールの「イエローライン」(約30.4km)の一部区間がソフト開業した。近年のバンコクの鉄道は、システム一式と車両を日本勢が受注したパープルラインや、在来線を改良して日本製車両を投入したレッドラインなど日系企業の展開も見られるが、イエローラインはタイ政府予算で整備され、車両はボンバルディア(現アルストム)のINNOVIAモノレールを原設計とした中国中車南京製で、その他システム一式とメンテナンス契約も同社が受注した。

土壇場での逆転受注を許すなど、日本にとっては手痛い経験もあるバンコクの都市鉄道。中進国入りしているタイでは、ODAにおいて調達条件を日本タイドとするSTEP対象外となっている(2023年6月3日付記事「鉄道輸出『オールジャパン戦略』の時代は終わった」参照)。では、これまで日本はどのように関わり、企業はどうやって入り込んだのだろうか。

200km超に発展したバンコク都市鉄道

渋滞都市として悪名高かったバンコクに最初の都市鉄道が開業したのは1999年のこと。バンコク都庁の管理の下、民間のBTS(バンコク大量輸送システム社)が営業するライトグリーンラインとダークグリーンラインの最初の区間、計23.5kmである。当時はバンコク都庁および政府に予算がなかったことから、この区間はバンコク都庁がBOT(Build Operate Transfer)方式でBTSと契約し、民間予算で建設されている。当初はカナダ・バンクーバーのスカイトレイン技術を採用する予定だったが、最終的にドイツの技術を導入することになった。

その後、都市鉄道建設はバンコク都庁と中央政府のパワーバランスの問題などもあり、遅々として進まない時期もあったが、2010年頃からは整備が加速し、今ではBTSと国営系のMRTA(タイ高速度交通公社、以下MRTと記す)、および国鉄傘下のSRTETを合わせて約210kmまでに発展し、2029年までに計14路線約555kmの路線網が整備される予定である。

タイ政府は1990年代からバンコクの都市鉄道整備に関わるマスタープランを独自に策定しており、現在営業中、または建設・計画中の路線網は、2010年に政府承認されたバンコク都市圏大量輸送システムマスタープラン(M-MAP)に基づいている。

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