お金がない人こそ結婚するべき合理的な理由 個人の自由だが、誤解の多い結婚のデメリット

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近年、非婚化が注目を集めているのは、変化があまりにも急激で社会のシステムが追い付いていないということが一つ。さらにもう一つ、より重要なのは、日本では非婚化が少子化に直結していることです。

日本では、結婚してから子供を産むという習慣があり、産まれてくる子供の総数に占める非摘出子(婚外子)の割合は、約2%に過ぎません。事実上、少子化問題は非婚化問題なのです。

結婚するしないは、もちろん「個人の自由」。ただ、本当は結婚したいのに、非合理な障害によって結婚できないという人が相当数いるなら、国は障害を取り除くよう努める必要があります。

1990年「1.57ショック」から現在まで、国は子育て世代への給付金の支給など経済対策を進めてきました。今回、岸田政権は経済対策をさらに強化しようとしています。つまり、国は一貫して経済的な負担が障害だと考えているようです。

しかし、30年以上も経済対策に取り組んできてほとんど成果がなかったわけですから、常識的には、経済対策以外のまさに次元の異なる対策を考えるべきでしょう。

国は結婚に関する誤解を解くべき

経済対策以外で必要なのは、家族に関する法制度・慣習の改革です。家父長制の影響が色濃く残る日本では、非嫡出子は法制度や慣習で不利な扱いを受けています。まさに非合理な障害であり、欧米のように、結婚しなくても楽に子供を産み育てられる社会に変えていく必要があります。

また、ここまで検討したように、結婚について国民に様々な誤解があり、それが非婚化に拍車を掛けている可能性があります。国民の心の中にある非合理な障害です。国は、学校教育やPRによって誤解を解いていくべきでしょう。

繰り返しますが、非婚化と関係が深い孤独は、国民の精神・肉体を蝕む重大な問題です。政府は、2021年に英国に次いで世界で2番目となる「孤独・孤立対策担当大臣」を任命し、孤独・孤立対策を進めています。ただ、国民の注目度は低く、対策は小粒で、今後のPRや対策強化が期待されます。

結婚というと、どうしても「個人の自由」の一言で議論が停滞しがち。しかし、結婚のメリット・独身のデメリットの大きさを十分に理解したうえで、最終的に国民が自由に結婚するしないを判断する状態にしたいものです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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