苦戦の化学大手「雨のち晴れ」とはいかぬ理由 厳しい事業環境だからこそ得られた収穫も

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悪いことが重なった2022年度に対して、2023年度は回復軌道を描く見通しだ。石化製品の数量は上向いていくとみられる。とはいえ、低調だった2022年度より「だいぶマシにはなる」程度に過ぎない。

2023年度の国産ナフサ価格は2022年度の第4四半期の水準より上がる見通し。ただ、在庫評価益は2022年度期中の主原料高を引きずる形で縮小が見込まれる。また、半導体関連や電子材料は、2023年度序盤はまだ低調が続いている。夏場以降は復調の期待がかかるものの、高水準を望むのは難しい。

2023年度以降も、各社が脱石化の構造改革を進めていくことに変わりはない。三菱ケミは、2024年度に石化事業を合弁化して連結から切り離す計画を発表済み。旭化成は、石化事業の合弁化や撤退も選択肢に入れたうえで、2024年度中に今後の方向性を打ち出す方針だ。

値上げ交渉の過程で強み・弱みがあらわに

足元は「雨のち晴れ」とはいかない状況だが、収穫がなかったわけではない。原油価格の高騰が国産ナフサ価格に加えて物流費や光熱費の上昇も招き、収益を圧迫した。そうした中で、各社は付加価値を売りにする機能製品も含め、値上げ交渉に全力を注いできた。

値上げ交渉の過程で、「値上げが通りやすい製品と通りにくい製品があった。他社製品に切り替えがきくものでは、そう簡単にはいかない。どの製品に強みがあるのか、あるいはないのかが、ハッキリしてきた」(三菱ケミ関係者)。同社は「製品価値に基づく値決め」を強力に推進することで収益力の向上を狙っており、価格交渉で得た知見も、大いに生きてきそうだ。

また、住友化学の岩田圭一社長はかねて、コスト上昇の局面を「製品の真の競争力、価値が問われている時期だ」と語っている。

厳しい事業環境だからこそ明確化された、各製品に対する「取引先からのリアルな評価」を基に、これからは競争力の高いものを伸ばしていくのか。あるいは、現状ではまだまだ課題があるものを磨き直すのか。

うまく事業戦略に生かすことができれば、足元の業績苦戦はこの先に花を咲かせるための「恵みの雨」になるのかもしれない。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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