重力に逆らって上昇する日経平均の下落はいつか 世界の投資環境はどんどん悪くなっている

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また、こうした金融環境と関連して、気になることが2つある。1つは、アメリカの商業用不動産の不振だ。

商業用不動産の不振が招く金融引き締め懸念

最近の景気の不振や、リモートワークの定着による出社社員数の低迷によって、オフィスビルの空室が増えている。5月4日付のCNBCテレビでは、“commercial real estate crisis”(商業用不動産の危機)という特集が取り上げられ、マンハッタン地区のオフィスの空室は9400万平方フィート(約873万平方メートル)に上り、エンパイアステートビル37棟分に相当するとのことだ。

また空室の面積は、コロナ禍前の水準と比べると1.75倍に達していると報じられている。オフィスに出社している社員がほぼ48%しかいないということが日常化しているそうで、広いオフィスを返却してより狭いところに移転するという企業が増えており、それは当然の行動だ。

こうしたオフィス昼間人口の減少は、オフィス街など都心の小売店や外食店にとって打撃だ。筆者が昨年11月に訪米したときにはすでに、シャッターを下ろして閉店してしまった店が多かった。

さらには、市街地中心部の人通りが少なくなったことや、景気悪化による貧困層の困窮から、まだ開店している店舗を標的とした犯罪が増えており、高級スーパーのホールフーズやコーヒーチェーンのスターバックスなどが犯罪増を理由に閉店を進めているとの報道も目にする。小売業や外食業などの店舗用不動産にとって、かなりの痛手だろう。

こうした商業用不動産の斜陽は、銀行の商業用不動産ローンの劣化を引き起こす。だからといってリーマンショックが再来するとは見込まないが、銀行がさらなる不良債権の拡大にブレーキをかけようと、融資審査を厳格化し、それが一段と金融を引き締めるというおそれはある。

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