東京からもっとも近い被災地・浦安(6) 松崎秀樹市長--「痛みの分かち合い」で復興できる

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「オムソーリ」で30億~50億円拠出

--鉄鋼の流通会社が集まる鉄鋼団地や、東京ディズニーリゾート(TDR)など、地元産業も痛手を受けました。

TDRは駐車場が被災しただけで施設のダメージはほとんどない。しかし、市民がたいへんな思いをしているときに観光客を呼び込むことはありえない、と言ってくださった。4月15日にはライフラインが復旧すると伝えたので再開は早いと思う。

一方、鉄鋼団地にある各社は液状化の被害がかなり大きい。それでも市に対して復興支援などの要求をせず、災害対策本部に義援金を持ってきてくれたことはありがたかった。

──地盤改良などの必要性は?

元町では堆積土から長い時間をかけて徐々に水が抜けた。一方、中町、新町では今回の地震で一気に水が抜け、30~50センチメートル地盤沈下した。阪神・淡路大震災でのポートアイランドなどもそうだったが、復興はできる。ピンチではあるが復興に向けてはチャンスと考えたい。

──中町や新町では地価下落なども懸念されます。

一時的には下がるだろう。が、そこでめげる浦安市民ではない。私は復興を進める中で市民の皆さんの大らかさ、たくましさに感動する場面が多かった。幸い浦安市は全国有数の財政力を持つ自治体で、財政調整基金だけで130億円ある。この基金を活用し、30億~50億円程度を被災した住戸の復興支援に充てようと考えている。

財政はどうあるべきか、私はスウェーデンで学んだ。スウェーデンの租税の概念は「オムソーリ」、つまり悲しみの分かち合いだ。それに倣って痛みの分かち合いをしたい。

被害状況を正確に把握できていないので大ざっぱな計算だが、家が傾くなど被災した戸建て住宅500戸に対し1戸当たり300万円、集合住宅については1万3000世帯に10万円ずつ渡すイメージだ。詳細を詰めて、なるべく早く公表したい。

まつざき・ひでき
1950年東京都世田谷区出身、明大商卒後、代議士公設秘書などを経て91年千葉県議会議員(浦安選挙区)。98年11月に2度目の挑戦で浦安市長選に当選、現在3期目。76年から浦安市在住。

(聞き手:山田俊浩 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2011年4月16日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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