「子どもの弱視見逃し」は"脳の発達に影響"の深刻 3歳児健診での早期発見・治療が必要な理由
日本眼科医会によると、ヒトの目の機能は3歳ごろまでに急速に発達し、6歳から8歳ごろまでにほぼ完成するが、視力の発達が途中で止まっている状態だと「弱視」となる。子どもの弱視は目だけの問題ではなく、目から受け取った映像の情報を処理する脳の発達とセットなので、弱視によってピントの合った映像が脳に送られないと、「見る機能」は充分に発達しない。
子どもの弱視の割合はおよそ50人に1人。いわゆるロービジョン(社会的弱視)とは異なる。メガネやコンタクトレンズを使っても矯正視力が1.0に満たないが正しい治療をすれば視力が獲得できる可能性のある弱視、つまり「医学的弱視」である。
目の機能の発達に合わせて3歳児健診での早期発見・早期治療が求められる。このタイミングを逸すると治療効果が上がりにくく、後の人生でずっと眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても十分な視力を得られない。
3歳児健診に「屈折検査」を
Aちゃんの母親は「赤ちゃんの時から笑いかけると笑顔で応じます。だから見えていると思っていました」と話した。3歳児は視力が「0.3」程度あれば本人にとっても支障はなく、保護者や周囲の大人も気づきにくい。
医師は、自分を責めて泣き続ける母親を「今から治療すれば大丈夫です。見えるほうの目にアイパッチを着けて視力を伸ばしていきましょう。頑張りましょう」と励ました。また、Aちゃんに「あなたの目は左側だけまだ赤ちゃんなんだよ。だから鍛えてお姉ちゃんの目にしてあげようね」と説明すると大きくうなずいた。
その後、学校に行く前などに1~2時間、2年ほどアイパッチを装着することで視力は0.8~0.9程度にまで上がった。
不同視弱視の場合、アイパッチの装用時間は1日1~3時間だが、程度や疾患の種類に応じて変わる。弱視の発見年齢が高いと効果が出にくいため、長時間にわたって着けねばならない。適切な治療によって視力が向上すれば徐々に時間を短くし、正常になったらやめ、定期的に診察を受ける。
早期発見・早期治療が重要な理由は、アイパッチを着ける期間が短くて済むし、効果も大きいから。一方、保護者の危機感をあおりすぎると、「乳児のもっと早い段階で精密検査をしてほしい」などというニーズも出てくる。しかし、焦ることはない。「3歳児健診で見逃さないこと」が重要であるという。