岸田首相=「息子に甘いパパ」が払う痛すぎる代償 忘年会写真で結局更迭、上げた支持率も下がる

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「首相公邸」と名前が似た施設として、「首相官邸」がある。首相官邸公式サイトでは、両者の区別を「総理が執務をする『官邸』に対して、総理の日常生活を行う住まいを『公邸』」としているが、完全に「私邸同様の存在」とみなされている訳ではない。

松野博一官房長官は5月25日の記者会見で、「総理大臣の迎賓機能、執務機能を有する公的な施設であり、今回の報道にあるような行為は、適切さを欠くものである」との認識を示した。翔太郎氏には首相から注意をし、首相自身も私的な居住スペースでの食事に顔を出していたと、松野氏は会見で説明している。

なお、「首相秘書官」の職をめぐっては今年2月、性的少数者に対して「見るのも嫌だ」などと発言した荒井勝喜氏(経産省)が、発言翌日すぐさま更迭(こうてつ)されていた。それだけに、翔太郎氏に対しては注意のみであることで、「身内に甘いのでは」と指摘する声が相次いでいた。

その後、政府は5月29日夜になって、6月1日付で翔太郎氏が辞職すると発表した。首相自身も同日の会見で、今回報じられた行動が「公的立場にある政務秘書官として不適切」であるとし、「ケジメをつけるため交代させる」と発言。翔太郎氏の辞職後は、前任であった岸田事務所の山本高義氏が復帰すると発表された。

事実上の更迭となり、首相自身も任命責任があると認めたものの、辞職理由のひとつにサミット閉会により地元の調整業務が一段落したことをあげたり、一度は「注意」で済まそうとした背景もあり、SNSなどでの反応はあまり芳しくない。

厳しい目で見られる「世襲」「七光り」

SNS時代の到来により、「世襲」や「七光り」に対する風当たりは、以前よりも確実に高まっている。政策論議に持ち込もうとすると、法解釈や、諸外国の事例など、それなりに前提知識が必要となる。その点、世襲たたきであれば、図式としてわかりやすく、世論も「手ぶら」で参加しやすい。光熱費や物価の高騰などで、先が見えない日々を過ごすなか、一石を投じる「きっかけ」として、一定の支持があるのだろう。

2021年には、映像制作会社に勤めていた菅義偉首相(当時)の長男が、総務省幹部を接待していたと判明。「放送局の許認可」といった法律論に加え、菅氏の総務相時代に、長男が大臣政務秘書官として務めていた経緯から、コンプライアンス意識が欠けていると問題視された。

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