突然の死「連帯保証債務」負わされた家族の悲惨 銀行融資に経営者の個人保証とられていませんか
「ちょっと、どうなっているの? 全然意味がわからないわ」
「母さんにも銀行から知らせがいったのかい? 実は数日前に叔母さんから電話があって、『なぜ会社に関係のない私たちが会社の借金をかぶらなきゃならないんですか?』って言われたところなんだよ。本当に参ったよ……」
銀行融資に経営者の「個人保証」とられていませんか
会社が銀行から借金する際に、経営者個人が保証する、つまり、「会社が借金を返せなくなったときには経営者個人が家屋敷も預金も投げうって返済すべき」という商習慣が日本には根づいています。
これの良しあしを論ずることはここでは避けますが、そのため、後継者が保証をいやがったり、銀行サイドが特に親族外承継の際などに「この方では保証にならない」という立場をとったりすることがあります。
叔父が亡くなったのは2010年のことです。経営承継円滑化法は2009年にスタートしていますので、「個人保証の問題が事業承継のネックになっている」「国としても支援策が必要だ」という認識は、この事例の2010年のころにはすでにあったはずです。
個人保証がさらにやっかいなのは、保証している人が亡くなると、保証債務として相続人に当然に引き継がれてしまうところです。
私の叔母やいとこは事業に関係のない立場であり、当時、メインバンクから会社が3億円の借入があることも知りませんでした。保証債務に関する知識ももちろんなかったため、「数億円の借金をかぶらされた!」と勘違いしてしまったのでした。
そもそも、会長となって経営は甥(創業者の直系の孫=私の兄)に任せた叔父は、なぜ保証をとられていたのでしょうか?
実は、叔父だけでなく、相談役になっていた父も保証をとられたままで、新社長になった兄も含め、3人もろとも個人保証させられている融資契約をメインバンクと結んでいたのでした。
当時はまだ「経営者保証に関するガイドライン(2014年にスタート)」もなく、経営者が保証するのは当たり前、金を貸してくれる銀行には逆らえない、という意識が兄、叔父、父にあったのかもしれません。
会長の死を知った銀行は、私の母に連絡する前に、当然、配偶者である叔母のところに連絡したわけです。夫の死(医療事故の疑い)を受け入れられずにいた叔母にとって、銀行からの電話はまさに寝耳に水。
日ごろ弁護士との付き合いもないので、インターネットで一見の弁護士さんに相談をし、「連帯保証債務を引き継ぎたくなければ、『相続放棄』という選択肢があります」と説明されたようです。それを銀行に伝えたために、銀行としては、第3順位の母のところに連絡をしてきた、という経緯でした。
後日、兄はこのメインバンクとの付き合いを断ち切る選択に迫られ(為替デリバティブの赤字が拡大し、十分な説明がなかったとしてメインバンクと訴訟に。当時、社会問題になっていたテーマですが、ここでは詳細は省きます)、他行への借換にトライし、成功します。
この時点で、叔父から相続された保証債務は消滅したので、叔母やいとこは相続放棄をギリギリ踏みとどまって正解でした。ただ、いったんもたらされた亡き叔父のファミリーへの衝撃は癒えることは なく、叔母やいとこと、私たちの関係までおかしなものになってしまいました。
叔父の死は、私がライフプランナーという仕事に転職して5年目のことでした。
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