突然の死「連帯保証債務」負わされた家族の悲惨 銀行融資に経営者の個人保証とられていませんか
叔父が亡くなったとき、ちょうど 60歳となった父は、折り合いが悪いながらも共に経営してきた実の弟を失ったことで、3代目への承継を考えるようになりました。
自分の父親が65歳で亡くなったことを引き合いに、「65歳までは長生きさせてもらいたい」がそのころの口ぐせでした。
長男はすでに会社に入ってきているものの、店舗の現場で経験を積ませているところで、このとき33歳。あと7年、40歳になったら社長になってもらおうか。それまでの間、3代目社長は義理の弟(私の母の弟)に任せて私は会長になろう。そうすれば私が仮に65歳で亡くなっても、2人でうまくバトンをつないでくれるだろう――。こんなプランを父は立てたのでした。
小売業の不況はますます深刻になり、中小が大手に買収されたり、大手が大手を買収したりするようなことが増えていきました。そんな中、実家のスーパーは小から中の規模を維持して生き残り、兄が40歳を迎えるころ、父はまだ元気な67歳でした。
会長になった叔父の突然の死
母の弟である叔父は、社長として、会長である義理の兄と、これから4代目となる甥のことを支えてくれました。父のプランどおりに長男が40歳で社長になるころ、取引先もライバル店の方々も「石渡さんのところは上手に事業承継を進めていますね」と言ってくださったものでした。
父は67歳で相談役となり、叔父が60歳で会長に、兄が40歳で社長という体制になりました。
それから5年たったある日のことです。叔父が人間ドックの問診で心臓の軽い異常を訴え、精密検査のため検査入院しました。専門医の所見は「大丈夫です。ステントを入れましょう。手術はすぐに終わります」というものでした。しかし、日を改めて手術を受けた叔父は、それっきり帰らぬ人となってしまったのです。
病院と家族の間でどのようなやり取りがあったのかは、親戚である私にもよくわかりません。いわゆる医療事故だったのでしょうか。叔父には3人の子どもがおり、兄や私も小さいころからしょっちゅう遊んだ仲だったのですが、葬儀のとき、みんな納得のいかない表情を見せていました。
そんな事故があって、葬儀から3カ月がたったころです。私の母のところに電話が入りました。電話口の言葉に、母は驚愕します。
「弟さんの連帯保証債務が、あなたに相続されるかもしれません」
弟に先を越されて死なれてしまった喪失感の中、さらに心を切り裂くような銀行員の冷たい声……。
母はすぐに弟の妻(私の叔母)に連絡をとりました。すると、叔母はこう答えました。
「お義姉さん、私も子どもたちも、『相続放棄』をしようと思っているんです」次に母は、社長である息子(私の兄)に連絡しました。
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