『ガリバー旅行記 (Gulliver’s Travels)』--経済には気持ちも大事《宿輪純一のシネマ経済学》

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 しかし、彼も駆け出しの頃は、ホラー映画では真っ先に殺される役だったし、サスペンス映画でも同様であった。

そのジャック・ブラックが製作に入っていることもあり、今回のガリバーは赤Tシャツ、カーゴパンツ、コンバースといった風貌で、ヘビメタバンドのKISS(キッス)や、映画『タイタニック』『スター・ウォーズ』のパロディを織り交ぜ、いかにも“ジャック・ブラック的”で、彼の映画と言っても過言ではない。
 
 そんなこともあり、とても楽しい。現在、日本経済は自粛ムードも加わり、元気がない。このような時の気晴らしに適しているのではないだろうか。

経済にとって気持ち(気の持ちようと言ってもいいかもしれない)は、とても大事である。日本経済担当のエコノミストが必ずチェックする重要な経済指標の一つに「日銀短観」というものがある。これは(日本銀行)全国企業短期経済観測調査の略で、特に企業の主観による部分が注目されている。つまり、心理的な部分である。しかし、短観はとても当たる。

日本人は古来、経済判断で気持ちを重視してきた。たとえば英語で景気というとEconomic ConditionかBusiness Conditionとなり心理的な面は感じられない。それに対して、景気はまさに「気のありよう」である。
 
 実はこの用語は古く、1212年に鴨長明による『方丈記』にすでに使われていた。最近では「行動経済学」という心の働きを重視する経済学も誕生している。つまり、気持ちが経済も左右するのである。気持ちだけでも明るいほうが、自分にも経済にも良い影響がある可能性が高い。こういった点でも、暗い映画よりも、もっと楽しい映画が多く公開されることを筆者は望む。

この作品は『ナイトミュージアム』のスタッフが作っただけに、子供向けで本当に楽しい映画である。3Dにする必要はなかったのではないかとか突っ込まず、童心に帰って楽しんでみるのが良いと思う。


(c)2010 Twentieth Century Fox

しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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