名だたる企業が「アンケート調査」に大失敗する訳 あのマクドナルドでも苦戦してきた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし実際の購入は、非合理な意思決定を基になされ、気分、一番手に取りやすいところに商品が並べてあったという偶然、時間帯の影響など、さまざまな無意識の要素が働いています。

こういったことから、会議室の議論でもアンケートでも、行動経済学を考慮したほうが消費者心理をより深く理解できます。なぜなら、行動経済学はまさに人間(消費者)の無意識の意思決定(購買理由)を科学する学問だからです。

エグゼクティブがリサーチ結果を見て、「アンケートによれば80%の人が健康にいいメニューを選ぶと回答しているのに、なぜサラダが売れない? なぜケーキのほうが売上が高いのか?」と首を傾げますが、これは当然と言えば当然のこと。人間の心理や行動は非合理なのですから。

人間理解には考察よりも観察せよ

こういったことから、消費者や従業員など対象となる人間を理解しようと思ったら「考察」には限界があります。それよりも、「観察」をすることが大事です。はたからこっそりと見て、人が無意識にどんな行動をしているかを知るのです。

行動経済学が最強の学問である
『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そんな「観察」をする方法として、私がクライアントに勧めているマーケティングリサーチ手法に「エスノグラフィー」があります。

エスノグラフィーとは民族学で行われているフィールドワーク調査で、普通の人の生活に密着し、日々の習慣、儀式、食事、言語、余暇の過ごし方など、ありのままを観察して行動様式や文化を知る調査方法を指します。相手をただ観察することで、より本質に近い理解が可能とされ、ビジネスシーンでも取り入れられています。

顧客すべてにエスノグラフィーを用いるのは無理がありますが、主力商品の開発であれば、ターゲットになりそうな人たちに生活状態をビデオ撮影してもらう手法もあります。

定量調査は、一度に大量のデータが収集でき、行動履歴などシステム2で答えやすい質問には適切ですが、認知のクセを理解し、それを有効活用するマーケティングがしたいのであれば、「定性調査(インタビュー)とエスノグラフィー」の2つを用いて総合的に判断するのがベストですが、現実には「そこまでリソースを割くのは難しい」という企業がほとんどです。

それなら、どちらが良いということではなく、「何が知りたいか」に合わせて使い分けていくといいでしょう。

相良 奈美香 行動経済学コンサルタント/行動経済学博士

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さがら なみか / Namika Sagara

オレゴン大学卒業、同大大学院 心理学「行動経済学専門」修士課程および、同大ビジネススクール「行動経済学専門」博士課程修了。
デューク大学ビジネススクールポスドクを経て、行動経済学コンサルティング会社であるサガラ・コンサルティング設立、代表に就任。その後、世界3位のマーケティングリサーチ会社・イプソスにヘッドハントされ、同社・行動経済学センター(現・行動科学センター)創設者 兼 代表に就任。現在は、ビヘイビアル・サイエンス・グループ(行動科学グループ、別名シントニック・コンサルティング)代表。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事