アメリカの「医薬品不足」あまりに深刻な実態 がん治療すら危ぶまれる厳しい状況にある
「医薬品不足は深刻さの度合いを増している。私たちの誰もがそうした状況を目にしている。そして極めて近い将来、この状況は改善するのではなく、悪化する公算が大きい」。ゴーは取材に対し、そう述べた。
病院に勤務する薬剤師やサプライチェーンの専門家は、エイコーンが2月に突如として破綻したことに大きな衝撃を受けた。品質に懸念が生じても対応できるスタッフがいないという理由から、エイコーンの製品はその後、リコール(回収)された。
35州の医師が抗がん剤の供給でほぼないと回答
それが「泣きっ面に蜂」の状況につながったと、メイヨークリニックでサプライチェーン部門を率いるエリック・ティッチーは証言する。
エイコーンは、約100種類の医薬品を製造していた。その中には、小児病院が患者の呼吸困難を和らげるのに頼っていたシリンダー入りのアルブテロールも含まれる。また、ティッチーによると、エイコーンは鉛中毒の解毒剤を製造する唯一の企業でもあったという。
「医療は私たちの国がしっかりと機能する上で極めて大切なものだ。それなのに、国内の製薬会社の倒産を受けても、たいした対応がみられない」とティッチーは話した。
婦人科腫瘍学会は、ここ数週間で全国規模のアンケートを実施。それに対して35州の医師から、大規模ながんセンターや大学病院ですら重要な抗がん剤の供給がほぼないか止まってしまっているとの回答が寄せられた。
ニューヨーク州オールバニーにあるウィメンズ・キャンサー・ケア・アソシエイツのオーナー、パトリック・ティミンズは、自身の病院では先日、一部の抗がん剤の在庫が尽きたが、それを必要としている患者が25人いるという。
「患者はがんと闘っているのに、私たちは(抗がん剤という)武器を患者から取りあげている」。ティミンズは「少なくとも短期的にでも患者に治療を届ける方法、そして長期的には医薬品不足という何度も繰り返している問題を防ぐ方法を見出せないというのは、どう考えてもおかしなことだ」と話した。
(執筆:Christina Jewett記者)
(C)2023 The New York Times
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