アメリカの「医薬品不足」あまりに深刻な実態 がん治療すら危ぶまれる厳しい状況にある

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懸念をさらに深めているのが、肺がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がんの治療に使用されるジェネリック抗がん剤の不足だ。

婦人科腫瘍学会の次期会長に選ばれているジョンズホプキンス大学医学部教授のアマンダ・フェイダーは、「私の見解では、これは公衆衛生上の緊急事態だ」と話す。「幅広い人々に影響が及び、不足している抗がん剤の種類も多数に上っているためだ」。

アメリカがん協会は先日、抗がん剤不足による治療の遅れで患者の転帰が悪化してしまう恐れがあると警告した。

抗がん剤不足に阻まれる治療

2人の幼い子どもの父、39歳のライアン・ドワースは2021年にすい臓がんを克服したが、昨年末のスキャンで肝臓にがんの病巣が複数見つかった。ドワースは、4月に最後の4回の抗がん剤治療を受けられればと考えていた。

ところが、担当医から驚くべきことを告げられた。優先的に治療を受けられる枠に入らなかったというのだ。

「トンネルの先に光が見えている状態だった。本当にもう少しというタイミングで治療が受けられないと言われたので、余計にショックだった」と、アイオワシティーで特別支援学級の教師をしているドワースは話した。

エンジェルズ・フォー・チェンジという非営利団体を立ち上げたローラ・ブレイは、患者、医療システム、製薬企業の間を取り持ち、ブレイが「少量調達」と呼ぶ方法で入手困難な医薬品を患者に届ける取り組みを行っている。

ブレイはドワースのためにシスプラチンという抗がん剤の製造元に連絡し、ドワースやほかの患者のためにシスプラチンを数日以内に送るよう手配した。ただ、そうした幸運に恵まれない患者も多く、治療間隔に恐ろしい空白が生まれている。

アメリカ食品医薬品局(FDA)の広報担当者ジェームズ・マッキニーによると、長期にわたる医薬品供給不足という大問題に取り組んでいるホワイトハウスのチームには、国家安全保障、経済、公衆衛生の当局者が名を連ねている。この問題に対するホワイトハウスの関与は、ブルームバーグが一足早く報じていた。

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