決算書が物語るニトリと良品計画の決定的な違い 「時系列比較」でビジネスモデルの変化読み解く
まずは無形固定資産の変化の背景について見ていこう。日立の無形固定資産は徐々に増加し、2021年3月期には約2兆1260億円に達している。これは、近年日立が進めてきたM&Aによる影響が大きい。日立は前述のとおり、中核上場子会社の完全子会社化を実施してきたほか、2020年7月にはスイスABBのパワーグリッド(送配電)事業を約7400億円で買収している(株式の約8割を取得、後に完全子会社化)。そのため、無形固定資産には多額ののれんなどが計上されることになったのだ。
その一方で日立は、HDD事業を皮切りに非中核事業の売却を進めてきた。2017年3月期には、この期に売却した日立工機が連結から外れ、株式の一部売却を行った日立物流や日立キャピタルが連結子会社から持分法適用会社(関連会社)になったことで、これらの会社の資産や負債が連結貸借対照表(BS)に計上されなくなった。
有利子負債の金額が2016年3月期の約3兆6040億円から2017年3月期の約1兆1770億円へと大きく減少したのも、日立キャピタルや日立物流などの有利子負債が日立のBSに計上されなくなったことが主な原因だ。
有利子負債は再び増加
ただし、日立の有利子負債は2021年3月期にかけて再び増加に転じている。その理由は、積極的な事業買収に伴う資金需要だ。先に述べたABBからのパワーグリッド事業の買収には、事業売却などによって得た資金のほか、借り入れにより調達した資金が充当された。これが、近年の日立のBSにおいて多額の有利子負債が計上されることとなった理由だ。
このように、決算書を時系列比較で読み解く際には、実際のビジネスにおいて起こっていることと、決算書に表出しているデータとを突き合わせながら分析を行っていくのが重要となる。さらに分析を深めるうえでは、同業他社比較の視点を組み合わせることも有効だ。この2つの視点を組み合わせた分析の事例も見てみよう。
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