放射線でコメはどのくらい汚染されるか、日本のコメは危険か

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放射線でコメはどのくらい汚染されるか、日本のコメは危険か

深刻な状況が続く福島第一原発。3月15日の2号機爆発以降は、新たに大量の放射性物質の放出はないようだ。しかし、すでに放出された大量の放射性物質や、今後、放出される可能性がある放射性物質による農作物の放射能汚染は現実の問題となっている。
 
 では、放射性物質の濃度とコメの汚染はどのような関係があるのだろうか。2006年に発表された『農業環境技術研究所報告 第24号』から紹介する。
 
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 レポートによれば、核実験や原発事故から放出され、長期間にわたって環境を汚染するセシウム137(半減期30年)、ストロンチウム90(半減期29年)に関して、その大気中の降下量とコメの汚染を調べたところ、年間の放射性物質の降下量と、コメに含まれる放射性物質の濃度には相関関係がある。
 
 全国平均で見て、セシウム137,ストロンチウム90の年間降下量は、米ソによる大気圏核実験が盛んに行われていた1960年代は、1平方メートル当たり1万ミリベクレル程度と、現在(原発事故前)の1000~1万倍あり、当時収穫されたコメ(玄米)に含まれていたセシウム137は1キログラム当たり1万ミリベクレル=10ベクレル、ストロンチウム90は同4000ミリベクレル=4ベクレルと、現在の100~1000倍の濃度があった(白米は精米により玄米の4~6分の1の濃度)。

土壌の性質や放射性物質を浴びたタイミングによってコメに取り込まれる量は大きく変化するものの、基本的には放射性物質の降下が多ければそれだけコメへの放射性物質の取り込みが大きくなることはまちがいない。
 
 福島原発事故を受けて設定されたコメの摂取制限の暫定基準は1キログラム当たり500ベクレル(セシウム)であり、過去のピーク時の50倍に相当する。その意味では原発事故以前の1000倍超の放射性セシウムに環境が汚染されたとしても、そのセシウムの放出が短期間であれば、コメへの影響はさほどではないといえる。
 
 もちろん、原発に近い地域は極めて高い放射性物質に汚染されているうえ、今後、新たに大量の放射性が放出されない保証はない。ただ現時点では原発から遠方で平常時を多少上回る程度の汚染を受ける地域でのコメに対して過度の警戒をする必要はないといえる。

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