クラウンとプリウスを激変させたトヨタの苦悩 最盛期のわずか10%にまで落ちた2車への覚悟

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外観は、車両の考え方や機能を表現する手段でもあるから、新型クラウンと新型プリウスは、クルマ造りの方針まで変えたことになる。

なぜトヨタは、車両の性格まで変えるフルモデルチェンジを続けて行ったのか。この背景には、2車種に共通する悩みがあった。それは販売の低迷だ。まずはクラウンから見ていきたい。

クラウンの登録台数が最も多かったのは、1990年。この年、クラウンは1カ月の平均で約1万7300台を販売している。2022年に国内販売の1位になったN-BOXが約1万6800台だから、バブル期とはいえものすごい売れ行きだ。

1990年ごろに販売されていた8代目クラウン(写真:トヨタ自動車)

ところが、現行クラウンクロスオーバーが登場する前年となる2021年の1カ月平均は、わずか約1800台であった。1990年の“10分の1”である

2021年は、1990年に比べて国内販売の総数も減っているが、それでも57%だ。1990年の10%というクラウンの減り方は、激しすぎる。そこで、クラウンが低迷した理由を販売店に尋ねてみると、以下のように返答された。

2018~2022年に販売された15代目クラウン(写真:トヨタ自動車)

「1990年ごろは、『セルシオ』なども含めて上級セダンの人気が高かったが、今の上級車種では、ミニバンの『アルファード』やSUVの『ハリアー』が売れ筋だ。そのためにクラウンの販売は落ち込んだ」

「全車種全店販売」の功罪

クラウンの販売低迷には、2020年に国内で実施した、トヨタの「すべての販売店がトヨタの全車を扱う販売体制」への移行も影響している。

それまでのクラウンは、トヨタ店の専売車種だった。アルファードやハリアーは、トヨペット店の扱いだから、クラウンのユーザーが乗り替えるには、購入先をトヨタ店からトヨペット店へ変えねばならない。ユーザーにとっては面倒であったし、トヨタ店も顧客を失いたくないためクラウンの販売に力を入れた。

それが2020年に全店が全車を扱う体制に変わると、トヨタ店でもアルファードやハリアーを扱うから、もはやトヨタ店の顧客がクラウンにこだわる必要はない。その結果、トヨタ店でもクラウンからアルファード、あるいはハリアーへの乗り替えが進んだ。

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