クラウンとプリウスを激変させたトヨタの苦悩 最盛期のわずか10%にまで落ちた2車への覚悟

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この特徴を生かすため、新型プリウスでは1.8リッターエンジンにくわえて、動力性能の高い2.0リッターを主力として用意する。5ドアクーペ風の外観は、走りの良さの表現手段とされ、低重心になって走行安定性も向上させた。

外観と車両の性格を激変させたクラウンクロスオーバーとプリウスは、果たして好調に売れているのか。今は納期が大幅に遅延して、公表される登録台数は本来の人気を反映していないが、確認しておきたい。

2023年1~4月の1カ月平均を見てみると、クラウンクロスオーバーは4125台だ。セダン型の先代が売られていた2022年1~4月と比べて、2.3倍に増えた。

小型/普通車では中堅水準の売れ行きで、中心価格帯が500万~600万円という高価格車としては好調だ。ハリアーや受注を停止したアルファードに次いで、多く売られている。

プラグインハイブリッドも追加され、ますます人気のハリアー(写真:トヨタ自動車)

新型を買っているのはどんな人か?

では、どのようなユーザーがクラウンクロスオーバーを購入しているのか。販売店に尋ねると以下のような答えが返ってきた。

「一番多いのは、先代クラウンからの乗り替えだ。外観が大きく変わり、車両を実際に確認して買われている。そのほかはSUVが多い。従来型ハリアーからの乗り替えに加えて、輸入SUVに乗っていた方も購入されている」

プリウスは、納車が本格化した2023年2~4月に、1カ月平均で8460台を登録している。2022年の同時期に比べて、2.1倍に増えた。こちらも、どのようなユーザーが購入しているのかを販売店に聞いた。

「新型プリウスで目立つのは、大量に販売された3代目からの買い替えだ。先代型の4代目は、外観が不人気で購入を見送ったお客様が多かったが、現行型は気に入って購入されている」

マイナーチェンジでデザインが変わった4代目プリウスの後期型(写真:トヨタ自動車)

2000年以前を振り返ると、トヨタには背の低い4ドアハードトップの「カリーナED」やマークIIなど、カッコ良さに重点を置いた車種が豊富に用意されていた。それが今は実用志向が強まり、デザインで注目される車種が減っている。

クラウンクロスオーバーとプリウスは、デザインで選びたいユーザーの期待に応えているといえるのかもしれない。今後の売れ行きは未知数だが、この2車種は今のラインナップの隙間を巧みに突いており、将来の商品開発で参考になるところも多いだろう。

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渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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