女子アナの交際報道が絶対にやまない複雑な理由 なぜ芸能人より"女子アナ狙い"なのか

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最後に女性アナウンサーの記事を報じるメディア側の事情もふれておきましょう。長年交流がある週刊誌編集長は10年以上前の段階から、「芸能人のスター性が下がって、よほどの大物でなければ記事にしても売り上げにつながらなくなった」と言っていました。それがスキャンダルではなく、独身者同士の交際報道なら、なおのこと。彼に言わせれば、「大物以外で売り上げにつながりそうなのは、恋愛禁止のアイドルと女子アナくらい」だそうです。

また、週刊誌にスクープ写真を提供するフリーの知人カメラマンは、「芸能人は逃げ方やカモフラージュがうまくなったし、店側も工夫するようになった。それとコロナ禍で事務所のガードがますます厳しくなって、芸能人が撮りづらくなっている」と言っていました。

その点、若手アナウンサーは、メディアのカメラを避けることに慣れていないうえに、一般人のため生活風景を撮りやすく、芸能人のように守ってくれるマネジャーもいません。報じるメディア側としては、「テレビでは見せない一般人としての顔だからこそ撮りたい」という意図もあり、むしろ芸能人ではないからこそ彼女たちは狙われているのです。

今春は入社数年の若手を次々抜擢

近年、各局は制作費削減するうえで、芸能人の出演費を下げる必要性に迫られてきました。「アナウンサーを芸能人のように扱いすぎる」などの批判があっても、むしろ起用を増やしているのはそのためでもあります。

さらに、働き方改革を進めるために、出演数の偏りを減らすことになり、たとえば帯番組も1人が週5日担当するのではなく、2人立てて2~4日に分散させる形が広がっています。「1人の看板アナに頼ることをやめて、知名度の高い看板アナを複数作っていく」という方針のため、ますます女性アナウンサーの起用機会は増えていくでしょう。

実際、今春は冒頭に挙げた日本テレビの黒田みゆアナのほか、フジテレビの小室瑛莉子アナと岸本理沙アナ、テレビ朝日の安藤萌々アナなど、入社2~4年目の若手女性アナウンサーが帯番組のMCに抜擢されました。また、フジテレビに元櫻坂46の原田葵さんがアナウンサーとして入社したことが大きく報じられています。「今、週刊誌の編集部が最も狙っているのは彼女たち」といっていいでしょう。

付き合いのある週刊誌編集者たちは、「女子アナ特集をしても以前ほど売れなくなった」と言っていました。ただ、それでもここまで挙げてきた理由から、女性アナウンサーのニーズはまだまだ健在であり、とくにネット上の反響は大きく、彼女たちのSNSを記事化するウェブメディアの多さがそれを物語っています。

ジェンダーレスの意識が急速に高まらない限り、賛否の声があっても女性アナウンサーたちの交際報道はなくならないでしょう。ただ、それを見る私たちは彼女たちを興味本位の目で見たり、心ない言葉を浴びせたりしないように心がけたいところです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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