気鋭の経済学者である東京大学の小島武仁氏は、どんなアニメを観てきたのか。"推しアニメ"について語ってもらった。

小島武仁(こじま・ふひと)/東京大学大学院経済学研究科 教授。1979年生まれ。米スタンフォード大学教授などを経て2020年から現職。専門はマーケットデザイン、マッチング理論など。東京大学マーケットデザインセンターセンター長。『Dr.STONE』:全人類が一斉に石化してから約3700年後、超人的な頭脳を持つ主人公・石神千空は、原始に戻った世界に文明を再建すると決意する。(撮影:尾形文繁)
5月22日発売の『週刊東洋経済』は「アニメ 熱狂のカラクリ」を特集。この10年で市場規模は2倍となり、今の日本には数少ない成長産業となったアニメ。動画配信の普及もあり世界中でアニメファンが急増する中、沸騰するビジネスの最新事情や、根深い課題を深掘りしています。
子どもの頃、『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』が好きで、漫画もアニメも毎週楽しみにしていた。
今も少年漫画やそのアニメ版は折に触れチェックしているので、ここでは僕が実際に見て面白かった最近のアニメの中から、経済学的な観点で興味深い3作品を紹介したい。
まずは、『Dr.STONE』(2019年)だ。謎の現象により全人類が石化した世界で、数千年を経て復活を遂げた石神千空が文明再建を目指す。千空にフィジカルの強さはないが、天才的な科学オタク。ヒーロー像の多様化を感じると同時に、研究者の活躍する描写がうれしい。
本作には、千空が専門とする自然科学に加え、社会科学のイシューも随所にちりばめられている。例えば、資本主義の権化のような人物で財閥御曹司の七海龍水は新たな通貨制度を打ち立てるが、その成立過程には経済学でいう「期待」や「レピュテーション(評判)」の作用が見て取れる。
現実社会の課題に引きつけられる
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